下城NYニュース、01-'21
ニューヨークからの最新ニュースです。
実は今週はシカゴからです。
アメリカのコロナ感染状況は引続き収まる様子はなく、一時も早くワクチンの効果が出る事を待っている状態です。
ワクチン接種は12月中旬に医療従事者から始まり、既に二度目の接種も終えた医療従事者も多く、次に高齢者などコロナリスクが高い人、そして現在もワクチンが不足している中で、一般の人への接種も間もなく開始となります。
今週は首都ワシントンで新大統領の就任式などもあり、私達も視察で何度も訪問しているワシントンにも全米各都市にも、安全と平和が戻って欲しいものです。
私達が日々接している小売業や食品スーパーの業界において、特に広大な面積を持つアメリカでは今を取り巻くコロナの状況と規制が地域ごとに毎日の様に変わる現状から、食品店も次々と新しいアイデアを出して対処しています。
そこで起きている事はまるで生き物の様で、地域によって店によってみんな違う状況に対応していきます。 今やっている事は来月には違ってくるかも知れないし、他のものが出てきたり、無くなってしまったりが繰り広げられています。
食品小売りの分野では全米の多くの都市でレストランへの制限があり、引続き市民はお家ご飯が当たり前になっている事から好調で、多くの食品店はコロナ対策を考慮した上で安全にスムーズに買物が出来る様に工夫が行われております。
その中で今回取り上げたのは、通販の最王手であるアマゾンがフレッシュ業態の最新実店舗を開店させた事です。
西海岸ではロサンジェルスの郊外で昨年秋から開店しており、既に4店舗となっております。
アメリカの中央部では、12月にシカゴの郊外で中西部で初のアマゾンフレッシュの第1店舗目が開店しました。
実際にはこのネイパービル店は昨年の夏には既に完成しており、ほとんど報道されませんでしたが、コロナ渦で一気に需要が増えたデリバリーとピックアップだけに対応する「ダークストア」としての運営がスタートしておりました。
*ダークストアとは、食品店の店舗でありながらお客自身は店内で買い物出来ない店舗であり、スタッフがお客の注文に応じて商品を揃え、デリバリーまたは店頭にて受け渡しをする店舗です。
コロナが始まる前のこの数年間、アメリカのスーパーマーケットではこのデリバリーとピックアップの需要が増えていたところに、昨年初旬のコロナの発生で人と接触せずに買い物が出来るこのシステムが一気に脚光を浴びたものです。 ここでは通常のデリバリー車両の配達に加え、写真の様な個人車がたくさん動いていて小口配送はこんな手段を使うという様子も見えてきました。
シカゴ地域ではこのネイパービル店を皮きりに近日中に更に3店舗が開店する事になっており、既に1500人雇用してトレイニングを進めています。 次に開店の予定になっているショウンバーグ店も確認してきましたが、もうショッピングカートも揃っていて、開店は近日中(1月28日と決定)という状態の様です。
次にアマゾンフレッシュの最大の特徴ですが、お客はアマゾン・ダッシュカートを使う事で、買い物商品を選び、バーコードスキャンなどもせずにどんどんカートに入れ、買い物が終わったら専用の通路を通過する事で支払いも完了、買物が終わる事です。
お客自身のスマホに事前にアマゾンのアプリをダウンロードし、支払いカード等をセットする事でお財布もカードも一切不要、人とも接しない買い物が可能になったのです。
カートは通常のショッピングカートより一回り程小さく、ショッピングバッグ2個分までの買物が出来ると説明されています。 バッグからはみ出さない量との事なので品目数で言えば30〜40品目程度と想像します。 私も実際にやってみましたが、買物(約30品目)はスムーズに処理されました。 カート正面にはスクリーンが付いていて、その右側にはスマホのQRコードを読むスキャナー、左側はドリンクやスマホを置くホルダーになっています。
日本でもスマートカートなどが実用化されていますが、この分野の最先端企業のアマゾンでは使い方も最先端です。
現時点では多くの人にとって初めて使う事になるダッシュカートなので、店に入ったところでスタッフさんから通常のカートかダッシュカートを使うのか聞かれ、ダッシュカートの場合は、こんな風に店頭で、使い方の説明があります。
その横には数十台のダッシュカートが用意されていました。
使い方は、ごく簡単で既に多くの人のスマホに入れてあるアマゾンのアプリを開くところから始まります。
私もアマゾンは普段からよく使うのですが、知らぬうちにアプリがアップデートされておりスマホのアプリ画面は次の様になっていました。
アメリカの場合は以下の通りで、最初は表紙ですがその一番下に4つのマークがありその一つがショッピングカートになっています。
それをタッチすると、この写真で、上部には文字でCart, Buy Again 等と共にアマゾンの実店舗であるWhole Foods, Book & 4-Star, Amazon GO, Fresh In-Store の選択が出て、今回はFreshをタッチします。
そうするとQRコードの付いた右のページに変わります。
QRコードが付いたこのページがフレッシュ店舗用のアプリで、下の方には支払いカードの番号下4桁が表示されるので、今日の買い物はどのカードで決済されるかが確認出来ます。
という事は、このアプリ一つあれば通常のアマゾン通販は勿論、ホールフーズでの割引もデリバリーも、アマゾンGOの入店と決済も全て処理される事になるわけです。
先のダッシュカートの正面スクリーン右側のスキャナーでこのQRコードを読む事で買い物を開始出来るのですが、おそらく瞬時にショッパーの買い物履歴等の情報を引き出していると想像します。
ダッシュカートには見たところ6個の白いライトのついたスキャナーが付いています。 これが買い物商品をカゴに入れた時点でバーコード(又はPLUコード)と外観イメージを自動的に読み取っていると想像出来ます。
従ってお客が何かの操作をして商品のバーコードを読むという必要はありません。 パッケージのバーコードに加えてイメージ(外観デザイン)をスキャナーが読み取るという事は、事前に扱い商品全てのイメージも読み込む準備作業が必要になるわけです。
扱い品目数は無限大に成り得ますが、膨大な作業とミスが起きない様なシステム作りが必要になります。
更に、カートのカゴ自体には正確な秤が付いていて、重量当たり(100g当り単価)いくらかという商品を購入する場合は、その商品をカゴに入れた時点でそれを特定して、入れた商品の重量もグラム単位で(アメリカなので重量単位はオンス)スクリーンに表示される事になります。
この商品の自動読み取りと内蔵の秤による重量計測等を見ると、日本のスマートカートとは別物と分かります。
色々な価格の計算方法があり価格が決まってバーコードが付いた商品ばかりでないので、バナナ4本を買ってみました。
スキャナーがバナナを認識しますが、入れた本数の確認までは出来ない様で、この場合バナナは1本いくら(15セント)という価格設定だったのでスクリーンにバナナを購入した事が表示され、そこに本数を確認して入力する表示が出ました。 お客は買った本数を入れる操作が必要でした。(自己申告なのでその気になればインチキは出来る事になりますね)
余談ですが、こういう商品を買って子供が店内でそのバナナ一本食べちゃったとします、そんな時に日本では大騒ぎ(特にSNS上で)だと思いますが、アメリカでは何も起こりません。 お店としては、将来の常連客へのサービスと考えます。
又、店内の各所には旧来方式のラベラー付き秤が置かれていて、 選んだ商品を袋に入れて秤に乗せて4桁(オーガニックの場合は9で始まる5桁等)のPLUコードを打ち込む事で価格が表示され、バーコード付きのラベルがプリントされます。
それを袋に貼ってからカートに入れる事でスキャナーは価格情報も入ったバーコードを読む事で正確に処理出来ます。 おそらくこの部分はまだ改善の余地があるものと思われます。
付け加えさせて頂くと、アメリカでは10年ほど前から(店頭で用意されている)ハンドスキャナーをカートに付けて、お客が買う商品をスキャンしながら買い物をしていき、最後の精算支払いはそのハンドスキャナーの情報をセルフレジなどで読み取る事で、通常時間の掛かる精算を瞬時に済ませるというシステムがありました。 又、そのハンドスキャナーは今ではお客自身のスマホでバーコードの読取りが出来る様になっています。
このシステムはウォルマートでは”Scan & GO” と呼ばれ、ストップ&ショップ等のA Hold のチェーンでは”Scan It”と呼ばれて現在でも採用されています。
この場合は秤が付いていないので、上記の様なラベラー付きの秤で一部の商品をお客自身が処理していきます。
今日本でもスマートカートと呼んで、カートにバーコードリーダーを付ける事でお客が商品をスキャンしてカゴに入れる方式の自動精算カートが出ていますが、それだとこの移動式のハンドスキャナーがカートに付いている形に過ぎないので、セルフサービス精算と呼ぶべきなのではないかと思われます。
更には、アメリカ最大のスーパーマーケットチェーンであるオハイオ州のクローガーはニューヨークに本拠地があるメーカーのスマートカートを店舗にて実用テストをしていて、同スマートカートは実際にはニューヨークのマーケットやカナダのチェーンが役年前から実用として使っています。 このカートをクローガーではKroGOと呼んでおり、テスト終了後に結果によってはチェーン店2800店舗で使われる事になります。
使い方はアマゾンのダッシュカートほどのハイテクではなく、むしろ日本で使われているスマートカートを発展させたものの位置付けです。
クローガーのウェブサイトでは以下の様に説明されています。
①買い物以外の持ち物は手前のカゴに入れておき、
②クローガーショッパーズカードを読み込ませて下さい、事前に読み込んだ割引クーポンが有効になります。
③買い物商品を選んで、バーコードを読み込ませてからカゴに入れて下さい。 重量を量る商品は内蔵の秤で計測出来ます。
④最後の支払いは据え付けのカードリーダーでクレジットカードかデビットカードで支払えます。
私の認識では、このカートもスキャナーが付いていて商品の自動読み取りが可能になるはずです。(ニューヨークのマーケットで実証積み)
店内の各コーナーにアマゾンのアレクサが配置されており、お客はそれを自由に使える様になっています。 このアレクサを使うと、目的の買い物商品が店内のどの売り場で扱われているか探す事が出来るし(売り場確認)、商品情報や今夜のレシピーを得る等、通常のアレクサの使い方も出来る設定になっています。
アレクサは勿論ショッピングリストを作っておいてスマホとリンクさせる事も出来るとの事です。
実際にこの店内にはアマゾン商品を売るコーナーもあり、アマゾンのカスタマーサービスデスクがあります。
デスクの裏は冷蔵庫、冷凍庫も並んでいて、フレッシュのアプリでオーダーされデリバリーするものや、お客によるピックアップの商品を準備と保管するエリアになっています。 ここにはアマゾンロッカーも付いていますが、カウンターでは通常の通販で購入したものを受け取る事も、その商品を返品する事も出来る様になっています。
ネイパービル店は約3500平米の売り場面積で、平均的なホールフーズの約4000〜5000平米より少し狭い為に扱い商品は限定になっています。 しかし通販のアマゾンフレッシュに準じる意味でも、ホールフーズの弱点とも言われ扱われていないナショナルブランド商品も多く扱われており、品揃えにはコカコーラ等ホールフーズで排除している商品もあります。 店舗サイズとしてはアマゾン傘下のホールフーズ365店に近いものですが、このフレッシュ店には365店には用意されていない精肉と鮮魚のサービスカウンターもありベーカリー、デリー、寿司等の店内調理商品もある事から本格的なスーパーマーケットという位置付けになると考えます。
扱われる生鮮食品のレベルが非常に高く、その面ではホールフーズに一脈通じるものを感じます。
ホールフーズより狭いもののグレードの高いミートコーナーとシーフードが並びます。 惣菜デリカのコーナー、ハムソーセージのコーナー、それらを使った店内調理のサンドイッチコーナー等、接客販売のコーナーも充実しています。
店内天井部分には無数のカメラとスキャナーが付いていて、売り場の棚には秤が付いています。 これでお客が取ってカゴに入れた商品を確認出来、商品在庫も確認できる事になります。 実際に売れた個数だけを補充している姿も見られました。 在庫管理と発注が出来ているかと思えば結構在庫切れの棚があったのも事実です。
店内に展示・在庫し販売している商品をデリバリーとピックアップオーダーにも使っているので、店内にはお客と混ざって商品を集めるスタッフの姿がありました。
右側の写真に写っている2台のカートがスタッフによるデリバリー商品のコレクトで、デリバリーとピックアップのオーダーに対応してスタッフが商品を集めている事が分かります。
取材は朝10時頃ですが、20人位の商品集めのスタッフが居ました。
コロナ渦においてデリバリーとピックアップが増えた事で、多くのスーパーマーケットチェーンではそれ専用にロボットを使ったMFC(Micro Fulfillment Center)対応を準備し、買い物客とは別にその作業をロボット化させています。
アマゾンは巨大な配送センターで通常の通販商品を揃えて発送しますが、フレッシュにおいてはエリアの店舗や併設の施設、別棟のMFC(マイクロフルフィルメントセンター)でフレッシュ商品も用意し、地元の顧客へ配送します。
それをラストマイル(Last Mile=最後の数キロ)の仕事と呼んでいます。
ダッシュカートは通路を通過しながらカゴに入る買い物商品のバーコードを常に読んでいくので、棚に展示された商品のバーコードを読んでしまうミスがあってはいけなく、棚の商品のバーコードが出ない様に揃えられています。
今回は複数回の買い物実験をしましたが、その種の読み取りのミスや、故意に一度カゴに入れた商品を返した場合、わざと違う売り場に戻してみた等のイレギュラーの買い方でもミスはありませんでした。 こういう場合の精度は非常に重要で、おそらく課題はあると思いますがよく研究されたシステムだと考えられます。
報道によりますと、通販から始まったアマゾンですが、アマゾン・ブック店、そして人気商品に触れて試して買える4-Star店があり、コンビニ型のアマゾンGO店、アマゾン・グロサーリー、そして500店舗を既に超えたホールフーズがあります。 ここからの数年の間に実店舗の合計は2000店舗を超える計画との事です。
このシカゴ店が出た事で本格的にアマゾン・フレッシュの全米チェーン展開が始まり、既にニューヨークの郊外、首都ワシントンの郊外と更なる工事が始まっている事から、ラストマイルの拠点がどんどん増え2000店計画は現実味を帯びてきました。
特にピックアップの買い物は全米で爆発的に増えていて、ネイパービル店では店頭に近いところにピックアップのお客用の駐車スペースがあります。
ネイパービル店では比較的店舗が小さい事と共に、付近には数店舗のアマゾンフレッシュが出来る予定なので、ピックアップスペースは現在10台分になっています。 お客はここに着いた時にスマホのアプリで何番のスペースに到着したかを知らせると、スタッフがお客の指定場所(トランク、車内後部座席等)に商品を積み込んでくれます。 店舗側ではおそらくスマホのGPS機能で、お客が店舗に近付いている事を把握して事前に準備などをしている事と想像します。 支払いの決済もオーダーの時にスマホで済んでいるので、人との接触無しで買い物が出来るという事になります。
コロナ渦における消費者の要望はこれで満たされているわけです。
又この店舗ではE.V.電気自動車用の無料高速充電器も2台分用意されています。 これから増えるであろうE.V.のお客の利用度も確実に上がるはずです。
アプリで支払いまでを登録してダッシュカートを使った買い物では、最後の精算は出口付近に作られた専用通路を通過する事でお財布やカードにノータッチで支払いを終了する事が出来ます。
全ての買い物はその都度スクリーンに表示されていますが、買い物が終了したら購入したもののリストを画面で確認し、合っていれば終了ボタンをタッチすると総額が表示されます。
スクリーン上でも購入品明細を確認できますが、終了のコンファームが来て数秒のうちに登録されたメイルアドレスにレシートが送られてきます。
買い物が終わったところで感想を聞かれて、「素晴らしい店ですね」と褒めてあげたらスタッフさんも喜んでました。
誰とも接触せずに素早く買い物する事も自分のペースで買い物をする事も出来、コロナ渦の現在、お客が求める事が実践されているこれからの買い物の仕方に違いありません。
アマゾンフレッシュの展開は、シカゴの次にニューヨークと首都ワシントン周辺と計画されています。
業界紙の最新号に発表されたコロナ対応において、店舗側の素晴らしい準備とセッティングのチェーントップ10(14位まで)です。
勿論このアマゾンが1位、先月のニュースにて紹介したテキサスのH-E-Bが2位、続いてトレーダージョーズ、ウェグマンズ、アルディと、私が常々紹介する素晴らしいチェーンが並びます。
コロナ渦で視察や体験にお越しになれない今、「下城NYニュース」が皆様に変わって生の情報を収集し提供致します。
アメリカの小売業で起きている事はまさに生き物の様なのです。
新鮮なものを是非先取りなさって下さい。
下城NYニュースではアメリカのスーパーマーケットと小売業の情報発信として、オンラインのウェブセミナーを行っております。
ニューヨーク周辺のスーパーマーケットは勿論、ウェグマンズやホールフーズと並んで全米最高と言われるパブリックスを含むワシントン商圏のマーケットやボストン、シカゴという小売業の先端店舗がある地域のマーケットと比較したセミナー内容をお作りしています。
通常のニューヨーク視察であれば2都市は可能ですがそれ以上は非常に時間が掛かりなかなか足を伸ばせません。
コロナ騒動が続いておりますので、皆さんが行けない分、私が足を伸ばしてご紹介致します。
以前にもお送りしましたが、アメリカの最新小売業をお伝えするオンラインのプログラムを用意してございます。
是非この視察研修プログラムで最新情報をキャッチして、アメリカの優良企業を目の当たりに接し、愛社精神と人間力を培いこの業界をリードするトップになって頂ける事、又、参加されるスタッフさんの感動を引出す事は間違いありません。
ご興味のある方は下城までご連絡下さい。
チャーリー下城NYC◼️ 01/18/2021
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