下城NY・ニュース 3-'19
下城NY・ニュース、2019年3月
天候不順がごく当たり前のニューヨークでは、寒い冬、雪が多い冬、温暖な冬など極端なばらつきがあり、毎日の天候が不順な事にも増して、四季そのものが気まぐれな事を感じます。
今年のニューヨークの冬は、雪が少なく比較的温暖でしたので生活者としては大変助かりました。
読者の皆さんはアメリカの各地であったりアジア諸国在住の方も居られ、日本の中でも全国各地の方が居られますが、皆さんの地域ではどんな冬でしたでしょうか?
3月15日の春を目前にした金曜日、ニューヨークの中心マンハッタンで、おそらく最後で最大となる複合施設が開業しました。
「ハドソン・ヤード(Hudson Yards)」と呼ぶ再開発で、マンハッタンの西側ハドソン川に沿った地域にグランドオープンとなりました。
2012年に第一期工事(約10棟のビル)に着工、2019年3月にグランドオープンしたものの工事も続行、2020年には第二期工事(9棟)に着工し、住宅や公立学校も入り2024年完成の予定です。
敷地面積は3万坪以上で、総工費は約2兆8千億円です。
この地下には鉄道の操車場があり、過去にはオリンピックの会場、野球場、フットボール等の予定が次々と出ましたが、結局はそのうちの3万坪以上の敷地を使って今回の開発となったものです。
ヤードというのは広っぱや広い敷地という意味がありますが、ゴルフなどの距離を測る時には1ヤード=約90センチという事になります。
今ニューヨークではもう一つブルックリンで進んでいる大きな再開発もネイビー・ヤードと名付けられており、これから暫くの間は特に多く耳にする事と思います。
こちらはハドソン川のほとりの「ハドソンヤード」という事です。
開発の中心になるのが第一期工事で完成したこの「ベッセル」と呼ばれる建物で階段と廊下(展望台)で出来ています。 中身は空っぽなので、ビルというよりオブジェの様でもあります。
最大直径は約15m、高さは約46m、廊下階段の全長は約1,6キロ(km)です。
階段は全部で154あって、各々13~18段あるそうで、どこから上がるかによって地上から数百段のステップを踏んで最上階まで繋がります。
エレベーターはありますが、一般用ではなく必要な人だけが使えるものです。
このオブジェの総工費だけでも$150~200ミリオン(=約200億円前後)との発表でした。
でもこれは屋外のオブジェですから、冬(-10℃以下は当たり前)とか雨・雪の時はどうするんでしょうね?
そして見たところフェンスは防登の仕組みが付いてなく低そうなのですが、大丈夫なのでしょうか?
しかしここはニューヨークです、クリスマスのイルミネーションとか綺麗だろうと今から楽しみです。
このベッセル、今度上がって確認してきます。
ハドソンヤードは狭義では今回開業した東西の道路30St.~34St.と南北の道路10Av.~ウエストサイドHwy.までを指しますが、その周辺を含む広い経済開発地域を指す事もありその場合はマディソンSQガーデン、ペンシルバニア駅、ポートオーソリティ・バスターミナル、ジャビッツ・コンベンションセンター、リンカーントンネルも含まれます。
ニューヨーク州、ニューヨーク市、ニューヨーク交通局が合同で開発計画を立て、ミッドタウンの中心街を、荒廃していた西の端まで広げて金融を含むビジネス街と歓楽街、住宅街を含む総合開発するという事でした。
それには狭義のハドソンヤードに加え、民間のBrookfield 社によるManhattan West等他の開発も入り、隣接する9Av.から始まるコマーシャルビルを含む大きなプロジェクトとなりました。
我々にとって目に入るのは先のベッセルというビルと共に、正式名では“The Shops & Restaurants at Hudson Yards” と呼ぶ7階建てのショッピングセンターで、そのキーテナントとしては、ニューヨーク市内に今まで無かった全米最高級百貨店ともいわれるニーマン・マーカス(売り場面積約1万7千坪)が入り、5階から7階までを占めました。
モール部分のテナントには世界の高級ブランド店も多く、ディオール、ティファニー、ローレックス、カルチェ、コーチ、ダンヒル等が含まれ、洒落た店、カジュアル店など約100店舗が入る予定です。
勿論、高級ブランド店は更にニーマン・マーカスの中にも多数入店しています。
日本でおなじみのMUJI、ユニクロも入り、日本にも進出している小売業やShake Shack等のレストランも入ります。
レストランは有名シェフの高級店、トーマス・ケラー、ホセ・アンドレ等が店を開き、大小の店舗、地階には3千平米以上の広いフードホールを含めて25店舗以上になる予定です。
更に、ニューヨーク最高のグルメストアといわれるシタレラも新しいコンセプトのマーケットを出しました。
グルメストアとは食品店の中でも通常のスーパーマーケットとはうって変わって、全米からだけでなく世界中から珍しい食品・ご馳走を集める店で、シタレラチェーンの8店舗目としてここに約1千平米の店舗を出しました。
シタレラは鮮魚店から転身したグルメストアですが、ニューヨークで一番といわれる魚売り場は勿論、各売り場はイメージとしてデパ地下に匹敵する徹底的な最上級を目指しています。
このシタレラのロケーションでは食材を売るだけでなく、惣菜やイートイン出来るレディー(Ready to Eat)の商品が充実していて店頭には広いイートイン用のテーブル席が用意されています。(これをグロサラントといいます)
新コンセプトでは、調理されたロブスターや生牡蠣とカクテルソースですぐ食せるランチボックスも用意されました。
ニューヨークの酒販法で食品店ではワインやリカーを扱えませんので、シタレラ・ワインショップを隣に開いています。
ランチやディナーの需要は勿論、このエリアに住む高額所得者の夕食にテイクアウトやデリバーされる事となります。
ハドソンヤードの開発だけでも4000ユニット以上の住宅が出来るわけで、この地域の買い物の場として現時点では唯一のシタレラだけですが、時間の問題で他の素晴らしいマーケットも進出してくる事と想像出来ます。
ご承知の通りニューヨークの住宅事情は異常なのですが、その住宅を見てみました。
新築である事、リバーサイドやミッドタウンのビューがある事もあり、多くのアパートは高額で売りに出され、隣接に古いビルで小さな間取りで$5千万円程もありますが、6LDKの$32ミリオン(35億円以上)という2階建ての物件もあります。(写真下)
そして、月額家賃100万円以上のユニットも沢山リストに出てましたが、以下は$16,700.(約170万円)の3LDKです。
ハドソンヤードには約100万平米のオフィススペースが出来、賃貸と分譲を合わせて4000ユニット以上の住宅物件が既に一部引き渡されていて、シェッドと呼ぶ文化センターが出来、音楽と芸術の空間も間もなく完成です。
実際には開発の多くは未だ完成されていない部分もあり、ショップスの店舗も2/3位がオープンしておりますが店頭に配置されるテーブル席や公共の部分に入るべくベンチなども未完の状態で開業しています。
こういう形でグランドオープンする事もアメリカではごく普通で、大きなビルでも完成してその部分の検査を通し、オープン出来る部分からオープンし、アパートなどでは完成したところから入居していく事の現実を見ている気がします。
何といってもこの地域チェルシー地区からハドソンヤードまでは、つい最近までスラム街が残っていたところですから、この15年間のお洒落になった街チェルシーや空中公園ハイラインの再開発、そして今回の開発で移住や迷惑を被った近隣住民が居る事も間違えないし、その分で大儲けした人も居る事でしょう。
最高級ショップやハイライズのビルが集まるハドソンヤードから、ハイラインをずっと南へ歩いて南の端まで歩くとそこにはホイットニーのミュージアムがあり、その間がニューヨーク屈指の高級エリアに生まれ変わったわけです。
しかしながら15年前まではホームレスも住む危険地帯だったわけで、今でもごく一部の低所得者層が残っています。
実はここに私が心配する部分もあるのです。
Related Companyと Oxford Propertiesという巨大で裕福なディベロッパーによる開発である為に、テナントもターゲットの客層も住民層もアッパーの層を重視している事で、偏った再開発でありニューヨーク市が本当に作るべきものになったかどうかは分かりません。
多くの庶民や観光客が、見るだけでなく買い物をして食事をする場になるのかどうか、見極める必要があります。
十年前は上の写真の様でしたが、現時点ではその開発の昔から今までの過程が目の当たりに見られる過渡期の時点であって、この先は時間の問題で開発された姿だけを見る事になります。
小売業や開発に関わるビジネスの方がプロの目で見て頂くと、どんな計画でこれを開発したのか非常に興味深いものが見付かるはずです。
日本政府が今アメリカで強力に推進しているのが日本産の食品を大いに輸出して販売しましょうという計画です。
こういう趣旨なので、私もJETROニューヨークに協力してそれに参画しております。
特に今進めているのは日本産米粉で、加えて緑茶、日本酒などで、プロモーションも進んでいます。
今月行われた日本酒のプロモーションでは、協賛しているニューヨークの日本酒を扱うレストランが各々のアイデアで選んだメニューを注文すると日本酒が無料で付くというもので、メニュー選択も付く日本酒の種類も店によって変わるといものでした。
日本酒以外の食品でも、どんなプロモーションをするのか楽しみにしているところです。
そこで米粉ですが、お米の国である日本産の米粉の品質は非常に高いのですが海外への輸出は限定的です。
日本では本来お米の生産能力はあるのに、消費が低迷している為に生産を抑える状況が続きましたが輸出を増やす事で生産を再開させるという計画です。
アメリカではグルテンアレルギーの為に小麦を食べられない人やダイエット志向の為に小麦食品を抑える人が多く、その流れに乗る事でアメリカへの輸出を拡大させます。
実際に日本産米粉を使ったパンやクッキーなどを試食してみましたが、中にはそれと分からない位の自然で美味しい食感のものもありました。
ブルックリンの有名カフェ「Bien Cuit」のオーナーシェフが協力し作ったレシピでは、日本産の米粉を使う事でアメリカ産の米粉では出せないふっくら感を出せたとの事でした。
緑茶や抹茶といえば、特にニューヨークでは既に外国のもの感は無く菓子やドリンクで相当使われていて中には現地人による専門店なども出ています。
グルテンフリー専門のお菓子やさんや惣菜店、冷凍食品店などが出ているので、日本産米粉を使った食のビジネスが始まる事と期待しております。
米といえば、日本にはブランド米の専門店があちこちに見られますが、ハワイで運営している日本産の主にブランド米をお客の要望に応じた精米歩合でその場で精米して販売する米店が、ニューヨークにも進出し間もなく開店するというニュースがあります。
ニューヨークでは、もう寿司やラーメン、定食に日本式のステーキ、その他の日本食店の進出ばかりではなく、ニューヨーカーの為に日本の安全で健康志向の食材を輸入する状況になっています。
間もなく春になり、我々が力を入れる小売業界・食品関連の視察研修が始まります。
この春はボストンからニューヨークにかけて興味深いルートを用意しました。
ボストンには全米最高のスーパーマーケットとも言われるウェグマンズがフラッグシップ店を出しているのと共に、街中型のビルのテナントとして入る小型店を出し各々が違った形のグロサラントとして絶好調です。
日本の都市部でも十分に使えるコンセプトであり、これらを比較して視察するルートを提案しました。
グロサラントといえば全米展開が始まったイータリーがボストン中心部にもあります。
ボストンでもホールフーズやトレーダージョーズもありますが、むしろ特にお見せしたいのは素晴らしいローカル店、リージョナルのチェーンです。
日本の業界でも話題に上がりましたが、抜群の集客と売上げのマーケット・バスケット、ロシュ・ブラザース等を組み込みました。
店名は出せませんが、郊外の住宅地にあるファームストア型のグルメマーケット、全米でもトップクラスのこんな店があったらなという素晴らしい食品店です。
是非この視察研修プログラムで最新情報をキャッチして、アメリカの優良企業を目の当たりに接し、愛社精神と人間力を培いこの業界をリードするトップになって頂ける事、又、参加されるスタッフさんの感動を引出す事は間違いありません。
ご興味のある方は下城までご連絡下さい。
チャーリー下城 NYC■ 3/26/2019
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Charlie Chikao Shimojo/チャーリー・下城
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Shimojo NY News Co., Ltd/下城NYニュース
web: shimojoNY.com
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