下城NYニュース 8-'20

下城NY・ニュース、2020年8月

  

アメリカでは未だにコロナ感染拡大中の地域もある中で、幸運にもニューヨークの周辺はコロナを縮小させる事に成功しております。

しかし当然地続きである大きな国で、各地からの人的・物的の流入が多い事で再拡大の心配もされています。

この状況のニューヨークですからビジネス再開を強く望声もありますが、これを一気に開けてしまった全米各都市や海外での失敗例も見られており、総指揮者のクオモ知事としてはまだ再会出来ない状態なのだと感じております。

その証拠に我々が切に望むものの一つであるニューヨーク市内のレストランのダインイン(店内飲食)は、近隣地域は制限付きで再開しているものの市内についてはもう少し先になる様です。

そんな中でも市内や周辺で起きているのは、コロナ騒動の最中でもエッセンシャルという生活必需品を売ってきた食品スーパーマーケットの新店舗が続々と開店しています。

前回の下城NYニュースでお伝えしたウェグマンズ・ハリソン店は、予定通りの8月05日に開店しました。 当初の6月07日(日)開店予定からはコロナの影響で工事が中断し2ヶ月遅れましたが、設計にも手を加えコロナ対策を盛り込んでの開店となりました。 

店内図には載っていない「デリバリー・カーブサイドP/UPコーナー」等があります。


グランドオープニングの混雑を避ける為、開店日は水曜日とし、開店のPRも大々的にはしていなかった様です。

ハリソンのこの立地は直近には郊外型の大型オフィスビルが集まり、世界企業の本社などもある事から、更にそこには米国内だけでなく世界中から出張してくるビジネスマン用と思われるホテル等も集まっています。

その周辺は広く住宅地になっていてニューヨーク郊外屈指の高級住宅地があり、それを含めて働く中流家庭と思われる中級住宅地に戸建て住宅やタウンハウス、アパート住宅等が広がっています。

住宅地があり、そこに住む人達がニューヨーク市内まで通勤する事無く同様かそれ以上の仕事場があるという地域です。  アメリカでは優秀な人材を効率的に採用する手段と、市内中心部よりずっと安いリース料で広いオフィススペースを確保できる手段として郊外にオフィスを持つ企業が多いのです。  交通機関を使う事無く自宅からマイカーで仕事場まで通え、以前からフレックスタイムやリモートワークは普及しておりました。  多くの家庭は子供がある家庭で、消費意欲も購買力もある事が想像出来、共稼ぎが多い事も想像出来ます。

そんな職と住の環境の中にウェグマンズは開店しましたが、広い駐車場の手前にはオフィスビル、住宅ビル、ホテルが並ぶまさにこの地域の典型的な姿が見えています。 駐車場の一角には、後で述べる「カーブサイドピックアップ」専用の駐車スペースがあり、同様にフードコーナーのピックアップスペースも作られています。

店内に入ると、そこは広いカラフルな売場が広がります。

入り口から正面がフレッシュなのはウェグマンズ共通のセッティングで、一番奥まで見通せる様に背の低い売り場です。

ウェグマンズは高級スーパーマーケットに間違いありませんが、生活必需品や多くの売れ筋商品においてPB商品を中心とした大きなパッケージのクラブパック商品を用意してあり、コストコやウォルマートに充分対抗出来る価格を打ち出しています。 

扱い商品数は7万~季節によって8万品目といわれています。

左側はケーキ、ベーカリー、サンドイッチと惣菜等のマーケットで、更に左側には手作りハンバーガーのバーガーバー、エスプレッソバー、ピザ、等のサービスカウンターがあり、スシショップが並びます。 この部分はコロナ前であればこのエリアにはサラダバーと惣菜バーが並んでいたところです。

更にその部分には、イートインに購入も出来プリパックされてテイクアウトにも最適な商品も山積みされているます。 その横にはいつも通りの広いテーブル席が作られています。

先に述べた理由で、各地域の主要店内に作られたフルサービスのレストラン「PUB」等は今後は作られず、既に営業していたフルサービスレストランがあるロケーションでも、それらを閉店としています。 

カウンターサービスは従来通りで、ブッチャー(ミート)、シーフード、チーズ、デリー等があり、コロナ中の対策として多くのプリパック商品が用意されている事や通常の試食販売をしていない事で接点をミニマムにしてあります。

各サービスコーナーとファーマシーやレジには、ディスタンスを取る為のスタンバイマークやガラスの仕切りが設置されており距離の近い直接の会話にならない様な設計にしてあります。

ウェグマンズは従来の食品や日用品を売るスーパーマーケットとは違う戦略をとっていて、周辺住民と共に地域で働くワーカー達もウェグマンズの顧客対象であり、レストランやイートインが充実しアメリカで最高レベルと言われるウェグマンズとしては、彼らの出店クリテリアの通りの立地に出店した事になる筈でした。

と言うのも、最近のウェグマンズの発表によるとそれまでの「グローサラント(グロサリーストア+レストランの造語)」を推進する事を中止し、アプリを使ったオンラインのグロサリーショッピングに注力する方針に変更するというものです。 オンラインオーダーで受け、短時間のうちに商品を揃え「カーブサイド・ピックアップ(店頭受け渡し)」も出来るし、「デリバリー(配達)」もすると言うシステムです。

この地域はニューヨーク市内に準ずる程に家賃も高く、しかし家はゆったりしているので子育て家庭には最適の地域である事から、よく食べよく育つ様に食欲と購買力のある家庭も多く、共働き世帯が多い事も特徴であります。

ウェグマンズの裏側の住宅地で典型的な戸建て住宅は、意外だと思いますがこんな感じです。

今売りに出てる中古住宅で、当地では中古住宅を買うというのは普通の住宅購入です。

築65年(これも全く普通です)、土地約400坪、150平米でゆったりした3LDKでお風呂場3ヵ所で、約7千万円(不動産税年間$140万円)。

これが中級としたら上はどうなのかとなりますが、ウェグマンズの裏側にはこんな家々が並んでいました。 

アメリカの家では、家族が住む用の家だとお風呂場が複数ある事が普通で、それは家族のほとんどは毎朝シャワーに入るのが習慣だからであり、夜と違って多くの場合同じ時間に重なってしまうのでそれに対応するものです。

不動産税が高いのは、学校の運営、道路整備やごみに関する経費、冬場の雪掻きなどに掛かる経費をきちっと税金で賄うからと言われているからです。

住民はリサイクルに協力はしますが、充分でない部分は各町が人を雇って(雇用を産む)きちんと仕分け、雪が降り出せば素早く除雪と融雪が行われスノータイヤ無しで通常走れます。 その為の高い税金と考えています。

そんな地域に開店したウェグマンズの新らしいもくろみは、企業の会議用や福利厚生のケータリングデリバリーは勿論、地域住民向けのケータリングやアプリを使ったオーダーで仕事帰りに買い物をカーブサイドピックアップする顧客を狙っていると想像出来ます。

この動きは実はウェグマンズだけではなく、全米の多くの地域で同様の動きがあり食品店チェーンによっては店舗網の一部を臨時のオンライン専用店に仕立て、一般の顧客を入れないデリバリー専門のロケーション(ダークストアと呼ぶ)にしています。  ニューヨーク市内でも、3月以降のデリバリー需要に合わせてホールフーズの一店を臨時でデリバリー専用の店舗としてありました。 それは最近終了して通常の店舗に戻しましたが、平行してデリバリー専用の倉庫をブルックリンい開き、それは倉庫地帯のお客を受け入れないと言う常設のデリバリーセンターという事です。

今アメリカではこの動きはロボット仕掛けの配送センター設備と形で進んでいますが「マイクロ・フルフィルメントセンター」といい、一部の店舗に併設する形で作られています。

この分野のリーダーはやはりアマゾンですが、アマゾンフレッシュのデリバリーだけでなく、アマゾンGOと同様のアプリを使って入店し、チェックアウト不要のアマゾン・フレッシュマーケットという店舗を開店させました。 現在はカリフォルニアに開店させましたが、同様の店舗が首都ワシントン等でも進んでいてこれも間もなく開店の予定です。

スーパーマーケットの在り方は、グローサラントからオンラインを使ったデリバリーとピックアップに変革しています。

ウェグマンズではインスタカートを使ってすべてスタッフによる手作業で店舗内の商品でデリバリーやピックアップオーダーを用意しますが、その日の午後にオンラインで発注し、仕事が終る夕方にピックアップすれば店内に入る事無く買い物が出来るというのが基本です。

ウェグマンズを含む多くのスーパーのデリバリーは、全米スケールで運営しているインスタカートなど外部ベンダーを使っています。 そのシステムはメンバー式になっていて、一定のデリバリー料金や店頭価格に手数料を加えたオンライン価格(又、ミニマムもあり)等となっていて店内価格より10~15%高い価格設定になっている様です。

アメリカではコロナ対策として重要なポイントは手洗いと共に他人に近付かないというディスタンスを取る事であり、買い物に行かない買い物(オンライン)が非常に好調です。

スーパーマーケットのデリバリーシステムには、その店舗かチェーンにおいて自前で配達までする企業のあるし、インスタカートの様にほぼ全米スケールで展開するものやウーバーイーツをはじめとする沢山の外部企業があります。 メンバー料金や商品代金においても様々になっています。

店舗で売っている商品そのままの値段に、配達料(とチップ)というケースと、年会費が幾ら(例えば$99、)を払うと1年間のデリバリーについて無料とし、毎回のオーダーでは店舗でオーダーを集める作業の手数料を取る場合やオンラインオーダーの場合の商品価格は店舗より高く設定してある等があります。

インスタカートの商品価格自体が店舗価格にマークアップしてあるので、カーブサイドピックアップの場合は追加料金は無しとなっています。

その他地域によって距離や物価を考慮した料金体制がある様です。

ニューヨークの周辺ではウェグマンズ以外でも食品店の開店がありますが、ニューヨーク商圏の一部ではドイツ発の強豪2社がしのぎを削っています。

先月号でも少し触れた、先行するボックスストアのアルディが全米2000店舗を超える展開をしているのに対し、後発で2017年にアメリカ進出を果たしたリドルは100店舗を超えたところです。


リドルとアルディですが、この2店が重複する地域は何処でもそうなのですが、当地で現在しのぎを削っていると言うのはニューヨーク市の郊外であるロングアイランド地区です。 アルディの先行進出は変わらないもののそれを追う立場のリドルはこの地域のローカルチェーン「ベストマーケット」を傘下に入れた事で、そのほぼ全店である25店舗程度をリドルに転換させているのです。

ベストマーケットは店舗網28店舗のほとんどがロングアイランド内で、1店舗はニューヨーク市内マンハッタンのハーレム地区、1店舗はクイーンズ地区にあり、更に1店舗はニュージャージー州なのでその気になれば全店舗がリドルに転換出来ると言う好条件です。

但しベストマーケットの既存店の多くはネイバーフット型モール(上の写真)の中にある事から、店舗デザインの変更は限定的でリドル独特の明るいガラス張りの店ではないのです。

店内はご覧の通りディープディスカウントのボックスストアです。

関東近郊ではビッグAというボックスストアチェーンがありますが、非常に似たコンセプトであります。

顧客層のターゲットは全く同じで、ウォルマート等のディカウンターも同じ大衆層です。 比較的エスニック系も多く大家族で食欲も旺盛です。

ウォルマートの近隣に出店する事で、出店の為のマーケット調査などを省く事が出来、ウォルマートの開店には建築許可、近隣の了解、工事自体に掛かる時間が大きく、これらの小型店ではウォルマートが開店するまでの間に大きな売り上げと利益を上げる事が出来ると言われています。

両チェーン共にスーパーマーケットの様なSKU4~5万品目ではなく、1万を切る限定商品を扱うものの近年フレッシュの売り場を広げて扱い品目と量、その品質を競っています。

店舗の広さは明白にリドルが広く、ゆったりした店内とインストイアベーカリーが付いている事は明白な差別化といえます。

8月に開店したリドルのPatchogue(パッチョーグ)店はベストマーケットの居抜きである為に、通常のリドルの店舗面積よりずっと広く作られています。

アルディはドイツ発でシカゴに本社を作り80年代には一気に展開をしました。 が、その当時のシカゴですから私が最初に下見に訪れた店は暗黒街の片隅の、暗くなってからは絶対に行ってはいけないという立地と店作りでした。

シカゴだけではないですが、その当時は安い物を求めるというのは何かのリスクも有り得る、危険を顧みない覚悟も必要だった、という時代であったわけです。

2000年頃まではそんなロケーションが沢山あり、我々の視察で廻る場合も立地調査からしていたものでした。

2001年にはニューヨークで9-11のテロがあり、それがアメリカ全土にも波及し、世界的な恐慌になりました。

その時は今回のコロナとは違い、何千人という人が一瞬にして命を落としていった事と共に長い期間の不況となった事で家庭を大事にする動きがあり、市民生活が大きく変わりました。

その時に起こった事の一つが、それまで大衆層がウォルマートやディスカウンターを多用していたものから、多くの中間層もアルディを含むディスカウンターを使う様になっていきました。

アルディのボックスストアのコンセプトは変わらないものの今のアルディの店舗や運営等は相当変わってきています。

しかし2000店舗以上も店舗があると、地方のアルディの中には従来型の店も残っているかも知れません。

アルディのニューヨークの展開は、既にロングアイランド内は勿論、マンハッタン内のハーレム地区の屋内型モールにも、クイーンズ、ブルックリン等市内の各地域にも進出しておりプレゼンスがあります。

しかし出店は市内の屋内モールやネイバーフット型モールである事から、本来のアルディの新型の外観ではありません。 

既存の建物ではおそらく構造的に無理なのでしょう。

そこでロングアイランドに8月開店させたノース・バビロン店(写真右)では新築の路面店で建物の横面には採光用の窓を付ける最新のデザインの店舗となりました。

駐車場の青く塗った4台分は、カーブサイドピックアップ用のスペースです。

店内もこの数年で採用している広い通路をとるデザインにしてあり、ディスタンスも取れる様な配慮になっていました。

ただしリドルとの大きな差は、両店共に典型的なボックスストアであり低販売管理比率を目指しているものの、絶対的な売り場面積の差による扱い品目のバラエティー、フレッシュ売り場の面積と棚数、そしてアルディにはインストアベーカリーが付いていない事です。


 コロナの影響で視察や研修を止めておりましたが、日程はまだ決定せずに視察のお問い合わせを頂いております。

コロナ後にどんな事をしているのか、ニューヨーク商圏以外の店舗へ目が行き届いておりませんので、引き続き状況を見ながら各地の定番マーケットや新店舗をアップデートしてまいります。

食品関連においては一部の店舗で閉店や撤退もあったものの、レストランやファッション関連、百貨店の様なコロナ倒産、閉店はラッキーな事にほとんどない様に思われます。

ウェグマンズのところで触れましたが、多くのチェーンはデリバリー体制を作っていて、店内の配置を変えている店もあります。

下城NYニュースに書き切れない部分は、ブログにて随時アップデートして参ります。

ただ今オンラインを使ったウェブセミナー、

「ニューヨークの最新小売業ウェブセミナー」の準備をしております。

こちらのご案内も追ってメイルやブログ、facebook 等でご案内とアップデートさせて頂きます。

今年も状況が可能になりましたら複数回の日本訪問を予定しておりますので、視察のご相談に関しても、私の日本出張中のタイミングが合う限り日本でのミーティング、オリエンテーション、説明会を開催する事とします。

早めに日程を立てて頂く事で調整させて頂けますのでご相談下さい。

是非この視察研修プログラムで最新情報をキャッチして、アメリカの優良企業を目の当たりに接し、愛社精神と人間力を培いこの業界をリードするトップになって頂ける事、又、参加されるスタッフさんの感動を引出す事は間違いありません。

ご興味のある方は下城までご連絡下さい。                               

                               チャーリー下城NYC■ 8/30/20

ニューヨークでは毎日の様に新しい動きがあったり情報が入ったりします、ニューヨークの小売業と外食産業の動くを頻繁にアップ致します。

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