下城NYニュース、03-'21
ニューヨーク市の南側にある最初の大きな都市がフィラデルフィアです。
この名前はよく知られていると思いますが、フィラデルフィア市がある州はニューヨーク州からニュージャージー州を南に下がった先がフィラデルフィアがあるペンシルバニア州になり、位置としてはニューヨーク市と首都ワシントンの間で、大西洋に繋がる大きなデラウエア川に面するという立地です。
そこには海運港があり、東海岸を縦断し西海岸にも繋がるメジャーなアムトラック鉄道路線と、I-95号線や大陸横断線に繋がるI-76号線等複数の幹線ハイウェイ、そしてすぐ横にはフィラデルフィア空港があるという、都市が栄える条件が揃った街という事になります。
ニューヨークからはアムトラックACELA新幹線もありますが普通の電車でも車でも約1時間半の街で、ここで久し振りに大きなスーパーマーケットの開店がありました。
このフィラデルフィアのダウンタウンの複合開発施設で今月開業したのが大手チェーンのジャイアントです。 これは街中の新築複合ビルの一部なので、店舗入り口は駐車場付きの一階にあり、実際の店舗スペースは二階で、エレベーターとお客用のエスカレーターだけでなくカート専用のエスカレーターも付いています。
住宅付き複合施設の小売スペースは、概してビル内の住民が固定客になる為専用エレベーターが用意されます。
フィラデルフィアはアメリカの歴史的にも非常に重要な街で、1776年に合衆国として独立する時の宣言書を作成し、独立した後には暫定的に首都であった時期もあります。 ここには独立記念館や自由の鐘などが置かれ、街中にはニューヨークよりも更に古い住宅地も残っています。
歴史の事を書くと長くなってしまうので今回は止めておきますが、今となっては斜陽産業となってしまった鉄鋼関係のビジネスで潤った時期があったものの、現在は金融などが主要産業になっており、ニューヨークと首都ワシントンという大都市に近く広い農地を活用した農業が盛んです。
ヨーロッパから移民してきて未だに旧来の生活と自然農法を守るアーミッシュがこの地域で農産物や加工食品、生活関連商品を作っています。 近代文化を取り入れず、電気は最低限の電灯と冷蔵庫等だけを使い、移動には今でも馬車や荷車を使う生活です。 農産物を作る場合にオーガニックや自然農法が基本で肥料も使わないか自然のものを使います。 生活の為にはその産物を売る事も必要で、その手段の為だけには自動車やトラックを使い、電話も使っています。
特に酪農や乳製品の生産、豚肉、鶏肉やたまごの生産量が多く、ニューヨークやフィラデルフィアで見られる多くの上級の肉やたまごはペンシルバニア産が多いとされています。
食べ物に関しては健康志向やこだわりが強いとされるペンシルバニア州ですが、その理由の一つにはアーミッシュが手作りで生産するオーガニックや自然製法の産物や食品へのアクセスが影響しているかも知れません。
フィラデルフィアには有名な食べ物が幾つかあります、一つはフィラデルフィア・チーズステーキ・サンドイッチですが全米各地に似た様なサンドイッチはあるもののこれがおそらく元祖です。 薄切り牛肉と玉ねぎを炒めてとろっとチーズが掛かります。 もう一つはビールのつまみにピッタリという、粒塩付きプレッツエルで、これはドライの硬いプレッツエルではなく、ソフトで、オーブンで焼いてその焼き立てを食べるものです。
甘いものとしてはハーシーのチョコレートがあり、フィラデルフィアチーズなども有名です。
そんなフィラデルフィアのダウンタウンにはアーミッシュの人達が商品を売る店が多数入った市民市場、レディング・ターミナル・マーケットもあります。
以前は電車の車両基地に使われていた建物ですが、車両基地が移転した後はコンベンションセンターとして使われ、その後は食品を中心とした市場として使われており、現在は80店舗以上のテナントが入っています。
こんなフィラデルフィアのダウンタウンで今月、3月19日に開業したのが、大手スーパーマーケットチェーンのジャイアント・フラッグシップ店です。
このジャイアントはオランダに本拠地があるAホールド・デルハイツ社の傘下のチェーンで、ペンシルバニアを中心に約200店舗の展開をし、社名はジャイアント・カンパニーと訳されます。 (赤い文字のロゴ)
というのも同じAホールドの傘下にもう一つのジャイアントという約170店舗と同じ様な規模で展開するスーパーマーケットチェーンがあり、これはお隣の州であるメリーランド州に本拠地がありジャイアント・フードと呼んでいます。(カラフルで紫色のロゴ)
たまたま同じジャイアントという全く別のチェーンを、親会社のAホールド社が傘下に入れ兄弟会社となったわけで、違いの一つは今回のジャイアント(赤い文字)は労働組合が無く、カラフルなジャイアントは労働組合員です。
車で来店する場合は一階の無料駐車場に入りますが、そこには無料の電気自動車のチャージャーが並びます。
どこの町でもダウンタウンの駐車スペースは結構な駐車料金が掛かる事と共に、時には停めたい場所で駐車場が見付からなかったりするので、ここに大きな無料駐車場があるのは有難いものです。
一階の駐車場横にはアプリでオーダーした買い物の受取りコーナー「GIANT DIRECT」があり、そのロビーにはスタバも出店しています。 コーヒードリンクでも飲みながら買い物をどうぞという事になります。
エスカレーターで2階に上がったところがジャイアントの店舗入口ですが、最初にカラフルで明るい大きなフロリストのコーナーがあり、街中の店舗には珍しく広々とゆったりスペースが取られています。
入り口にもう一つ置かれているのが「SCAN IT!」のハンドスキャナーです。 これは購入する商品のバーコードをスキャンしながらカートに入れていく買い物の仕方で、日本でも類似のシステムが使われていると思います。 Aホールドでは傘下のほとんどの店舗でこれが採用されています。
又、これはお客自身のスマホにアプリ「SCAN IT! Mobile」を入れる事で同様の使い方が出来る様になります。 支払いは登録したクレジットカード等で支払うか、セルフレジで支払う事が可能です。 実際に使用していないので報道を見る限りですが、日本でイオンが採用しているレジゴーに近いものと想像します。
又、東京の郊外と九州で展開しているトライアル社が採用するスマートカートはこのハンドスキャナーの機能の大型画面がカート上に固定された形と理解しています。 トライアル社はプリペイドカードを購入する手間が必要です。
日本には他にもキャッシャーレスやスキャンレスのシステムがあると聞きますが、体験してないのでコメントは省きます。 しかしこの分野ではアメリカのアマゾンがアマゾンGOやフレッシュの実店舗において実用している、購入商品をカートに入れるだけのダッシュカートに比べると、このSCAN IT! をはじめとするシステムは、悪いですが確実にローテクに思えてしまいます。
近いうちに明かしますが、アマゾン・フレッシュはシカゴに開店した4000平米以上の大きさの店舗でも、アマゾンGOと同様のシステムで、アプリを使って入店した後は清算不要で買い物が終わる「ジャスト・ウォークアウト式」という店舗の実験をしている様です。
下の2枚の写真は似てますが店舗が違います。 1枚目の店舗の天井には見られないカメラとスキャナーが2枚目の天井には沢山付いています。 そうです、ここで何かが行われているのいです。
このジャイアントは売り場面積が約6000㎡と、大都市の街中店としてはなかなか確保出来ない広さがあります。
全米のスーパーマーケットの業界では、今回のコロナ騒動で大きく運営方針変えている部分があります。 それはアプリを使ったショッピング方法で、買った商品をデリバリーする事もお客自身がピックアップも出来るというシステムを充実させた
事です。 大雑把にはこの5年くらいでその動きが出ておりましたが、ホールフーズなど一部のチェーンで需要が多く力を入れていた様に思えますが、それがこの1年で加速して、一気に5年分くらいの進展があった事です。
そしてもう一つ、店内で飲食もさせてゆっくり時間を使って貰う事で売り上げに繋げるという考え方、この数年間グローサラントという言葉も作られましたが、コロナの影響ではこれも変わってきた事です。
グローサラントのコンセプトではフードコートを充実させて広いイートインスペースを作ったり、フルサービス(ウエイトスタッフサービス)でお酒も出すレストランを作ったりしてきましたが、ソーシャルディスタンスや手洗い(+マスク)でコロナ対応という状況ではこれはプラスに働かなくなりました。 ところがこのジャイアント最新旗艦店ではそれが設置されています。
写真では見難いかも知れませんが、右はクラフトビールが40種類以上並んだタップのセルフサービスのサーバーです。
コロナの前からレストランやバーでトレンドになっていたものですが、コロナが始まってからは多くの州で使用制限されたもので、ここではその制限が解除になる事を前提に設置されています。 この立地がこんな形のフードコートを求めているのか、約2年前に着工している為にその設計変更が出来なかったのか理解に苦しみますが、この広いフードコートに集客してビールを飲ませ、商品をテイクアウトさせる為のものと理解したいです。 フードコートやレストランにおいて、今やテイクアウトは当然の売上げ手段であり、日本の消費者にも同様の使い方をして欲しいものです。
店内には買い物客と一緒にカートを押してお客のオーダーをピックしているスタッフが動いており、実際にこのフードコートで惣菜として商品をピックしている様でした。 これなら大きなフードコートも存在価値があるという事になります。
売り場は非常に明確です。 生鮮の売り場も通路が広くとられていて買い物もしやすいはずです。
高額所得者も想定している様で、ドライエージングを扱う精肉売り場や鮮魚でもグレードの高い商品が見られます。
各売り場は店内の離れた場所からでもわかり易い様、何の売り場なのか大きなサインが出ています。
調理の手間を省く為のカット野菜、カットフルーツの「Fresh Bar」や、日本へも飛び火していると聞きますが、Plant Baseの商品取り揃えも多く大豆や穀物系から作られる乳製品や大豆や豆腐から作られるミート類が揃っています。
アメリカではこのステイ@ホームの動きはコロナ期間中に限ったものではなく、将来もこの傾向は続くとみられ、便利さを体験した消費者においては、先に述べたショッピングのデリバリーやピックアップに拍車が掛かると言われています。
各スーパーマーケットはデリバリーオーダーの規模が小さかった時に利便性を考えて使っていたインスタカート等の外部業者に依頼するケースが多かったものの、確実に経費が掛かるその外注デリバリーシステムの契約を見直す傾向にあります。 自社のデリバリーシステムやピックアップの構築、立上げ、そしてシステムの一部はロボットを導入してマイクロフルフィルメントセンター(M・F・C)を併設する企業が出ています。
ジャイアントではフィラデルフィア市内の店舗展開に力を入れている事と、同市内においては小型のエアルーム・マーケット3店舗を出しておりこれを拠点としてデリバリーをするシステムが作られています。 この小型で街中型の店舗コンセプトは、サイズの大小はありますが競合他社でも同じ傾向があります。 写真は市内で展開しているジャイアント・エアルームマーケットとパブリクスがフロリダ州フォートローダデールで開店したグリーンワイズの最新店です。
アメリカでは全米各地でワクチン接種のペースが上がり、ニューヨークは全米で一番初めにコロナ収束宣言を出すべく、州知事と住民が協力して数値を一気に下げています。(現在州民の約30%が接種)
小売業の中でも特にスーパーマーケットはステイ@ホーム以降売上げを伸ばし業績絶好調が続いており、各地で新店舗も開店しています。
先月お知らせした通り、アマゾン・フレッシュの実店舗ではハイテクカートのダッシュカートを導入して、コンタクトレス(無人店舗という表現は間違い)で店内ショッピングが出来る店を続々と開店しています。
最新ニュースでは現時点で28店舗以上の開店を予定していて、ニューヨーク市と周辺地域でも最低2店舗の住所が発表されています。
下城NYニュースではアメリカのスーパーマーケットと小売業の情報発信として、オンラインのウェブセミナーを行っております。
ニューヨーク周辺のスーパーマーケットは勿論、全米評価でトップとランクされるアマゾンやH-E-B、ウェグマンズやホールフーズと並んでパブリックスを含むワシントン商圏のマーケットや、ボストン、シカゴという小売業の先端店舗がある地域のマーケットと比較したセミナー内容をお作りしています。
通常のニューヨーク視察であれば2都市は可能ですがそれ以上は非常に時間が掛かりなかなか足を伸ばせません。 コロナ騒動が続いておりますので、皆さんが現地へ行けない分、私が足を伸ばして情報を収集し、下城NYニュースでも取り上げている非常に優秀なテキサス州のH-E-B等もご紹介致します。
是非この視察研修プログラムで最新情報をキャッチして、アメリカの優良企業を目の当たりに接し、体験する事で、愛社精神と人間力を培って、この業界をリードするトップになって頂ける事、又、参加されるスタッフさんの感動を引出す事は間違いありません。
ご興味のある方は下城までご連絡下さい。
チャーリー下城NYC■ 03/25/2021
https://ny-news.amebaownd.com/
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