下城NYニュース、04-'21

ボストンで開店した高級スーパーマーケットをご紹介します。

マサチューセッツ州のボストンはニューヨークから北東へ約4時間の海沿いの都市で、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学など全米トップの大学がある事で知られ、ボストンのロブスターや牡蠣(オイスター)、マグロ等のシーフードでも有名です。

ボストンにはアメリカの歴史的なものが沢山保存され、相まって学術と芸術が優れているとともに、グルメの街でもあります。

数あるスーパーマーケットの中で、この地で70年前に創業し高級志向で展開をしているのが「Roche Bros.」です。

ボストン市内と郊外一帯で約20店舗、 各々付近には高級住宅地を控えた立地で展開しています。

ローカルチェーンの優位性は、地域の住民層や志向を細かく理解する事で地域に合った店舗や業態を出せる事でもあります。 ロシュ・マーケットでは、15店舗の高級志向のRoche Bro.に加え、地域に合わせた5店舗の小型店舗と大衆業態も展開しています。

2021年4月09日、市の中心から約10分西側の郊外であるウォータータウンにRoche Bros.の最新店が開店しました。

新店舗はショッピングモールのアーセナル・ヤードの中にあり、このモールは元陸軍施設だった建物を約40年前に再開発してモールとして開業したものです。 

100年以上前に建築され老朽化したモールの建物は大きな手入れが必要になり、2013年頃からその周辺を含めた広域で大きな再開発を始めました。

モール自体は営業を続けたままリノベーションを続けました。 再々開発して再オープンする商業施設のキーテナントがこのロシュで、モールに先行して先週グランドオープンしたものです。

再開発エリア全体には小売店のモール、レストラン(くら寿司含)、シネコン、ホームセンター等の他、オフィススペースとレジデンシャルが入り、加えて150室のホテルも既に開業、開発はそこで住み働く人達の日々の生活の場になります。

屋内と屋外を持つ大き過ぎないモールである事と無料の駐車場も使い易く、開店したロシュもスーパーマーケットとしては比較的小型の約2300平米であり、買い物がしやすそうです。 付近には複数の大型スーパーマーケットやGMSがあり、人気食材店もあり競合しますが、市内からは10分、ハーバード大学がある学術の街ケンブリッジからは5分、そしてレジデンシャルが入るショッピングモールの中という立地は他にありません。

コロナの状況から多くのショッピングモールが影響を受け、特に屋内型のモールは換気の問題や週末に集中する混雑などもあり閉鎖になったモールも見られます。 又、大型小売店も多くが閉店しています。 Bed, Bath and Beyond、シアーズ、JCペニー等キーテナントクラスの百貨店、そしてコロナ前ですがトイザらスやベビザラス、家電チェーンやホームグッズのチェーンも倒産しました。 そんな中でも集客が悪く老朽化していたこのモールを蘇らせ、キーテナントとしてロシェを導入したアーセナル・ヤードはおおいに評価されるべきものです。

閉店や閉鎖された大型小売業やモールに関しては、次なる使われ方が生まれており、後で述べさせて頂きます。

ロシュには外部の一般道路から直結で繋がる駐車場が店頭にあり、そこにはアプリでオーダーしたお客用のピックアップ専用スペースも付いていて広くとってあります。 駐車スペースは入り口横のエレベーターで繋がる地下駐車場があり、それも買い物客が直結で行き来でき、アクセスは非常に良く出来ている様です。

コロナ以降のスーパーマーケットでは最重要ポイントの一つがアプリの使い易さと店頭(カーブサイド)ピックアップのスムーズさになっています。 如何に短時間でデリバリーが出来るかを競っています。

アメリカにはデリバリー専用の店舗、ダークストア(クローガーのダークストア)なども作られています。

2300平米の売り場スペースは700坪程度と換算しますが、アメリカのスーパーマーケットの常で食品を中心に日用雑貨品と紙製品、ペット用品、清掃用品等がその他の扱い商品です。 大きなスーパーでは調剤薬局付きのドラッグストアが入る事が多く事務用品、文具、カード、食品に関連が深いキッチン用品などが扱われます。 又、小型の電化製品や衣料品、ホームリペアなどが入る場合もありますが、本来その種の扱い商品はウォルマートやターゲットなどのGMS業態で扱うものとされています。

このロシュでは店内の入り口にフローリストがあり、広い生鮮プロデュースと並び非常にカラフルになっています。

フローリストに並んでチーズコーナー、精肉・鮮魚のサービスカウンターがあり自家製のドライエージングも差別化として扱われます。 

ピザやデリのコーナー、ベーカリー、コーヒードリンクやサンドイッチを出すカフェと屋内屋外のイートインコーナーを作っています。

モール内のスーパーとしては十分すぎる内容を揃えています。 

彩りも綺麗な売り場をご紹介します。

モール内には通常の屋内スペースに加え屋外のスペースもあり、モール全体が完成した時には屋外スペースからロシュに流れるお客も相当あると思われます。 ロシュの出入り口はモールの屋外スペース側にもあり、そこにはフードも扱うエスプレッソバーとイートインコーナーがあります。 

トイレもその横にあります。 モール内を移動する客はフードコートとは別にこのカフェを利用し、天候が良い時期には屋外テーブルも使われると想像します。

巨大なモールではなく駐車場も近くにあるので、モールでの買い物や用事の帰りにロシュで食品を買うというアメリカではあまり使われない買い物方法もここでは生きてきそうです。

アメリカでは週に一度の食品のまとめ買いは、モールでの買い物とは別のお出掛け動機という考え方です。

アーセナル・ヤードのモールは再々開発で間も無くグランドオープンを迎える事と思いますが、全米のモールや百貨店の業界では閉鎖が続いていると書きました。  2020年は全米どこでもほぼ1年間コロナ対策によってステイ@ホームを強いられ、生活必需品であるエッセンシャルビジネス以外の商店やモールや劇場などの施設は一定期間の閉店や大きな制限を課せられました。

このボストン郊外でも実際に起きているのですが、モール全体が閉鎖に追い込まれそこにアマゾン等の通販の配送センターとして置き換えられています。 建築期間とコストを掛けずに設置出来、素早く操業を開始出来るからです。 この方法を使い、アマゾンは2020年1年間で配送センタースペースが150%伸びています。

ショッピングモール運営管理者としての全米最大手のサイモン・プロパーティーは、自社が持つモール内に倒産したJCペニーを63店舗、シアーズを11店舗あるそうです。 それらを空いたままには出来ず、小売業以外のテナントにも当然リースするべきと考えています。

スーパーマーケットの業界で言えば閉鎖したモール全体ではなく、ネイバーフッド型シッピングセンター(NSC)の閉店した大型小売店や百貨店のキーテナントスペースに目が行っています。  多くのビッグボックス店舗は7千平米から1万平米、時にはそれ以上のスペースがあり、多くのスーパーマーケットよりも大きなスペースです。

現在アメリカで新店舗出店のペースが速いのは、ドイツから進出し既に2000店舗を超えているアルディと、同じくドイツ発でアルディの競合でもあるリドルです。  ただ各々店舗サイズは1500〜2500平米程度と大きくはありません。

2020年秋からカリフォルニアとシカゴ郊外で展開が始まったアマゾン・フレッシュの実店舗では、この半年程の間に12店舗開店、そして最新ニュースでは更に37店舗の開店予定が出ています。

それらの多くが倒産した大型小売店の居抜き店舗で、大きなスペースの中に3500平米〜4500平米程度の店舗を作り、広く残ったスペースを今だからこそ必要になったデリバリー用のプレップ(準備)スペースとして使っています。

写真のこの店舗はシカゴ郊外ですが、「アマゾン・フレッシュ店の中でも特にアマゾンGOと同様のカメラとスキャナーを装備(天井を見て)して実験をやっている」コストの掛かった店舗です。 しかしこの店舗も以前ベビザラスだった店舗の居抜き物件であり、ここの床を見ると以前の間取りで使っていた部分がむき出しになって(色が変わっている)います。

アマゾン(ベゾス氏の考え方)は無駄なところにコストを掛けないというのが絶対条件なのです。

ですから沢山空いてしまい借り手の無いモールやその一部は、アマゾンとしては絶好のスペースと言えるのでしょう。

元々通販のアマゾンがフレッシュ商品を加えて宅配し、スーパーマーケットへ挑戦したわけです。 全米の食品販売最大手のウォルマート(生鮮を扱うスーパーセンター)とスーパーマーケット最大手のクローガーは、各々約3500店舗と約2700店舗の実店舗があり販売とデリバリーの拠点となっているから、販売拠点が無いアマゾン・フレッシュのシェアは小さく見ていたはずです。 

しかしアマゾンは500店舗以上のホールフーズを持っていて最新のニュースでは1000店舗以上の上記のアマゾン・フレッシュ店舗を計画し、全米に嫌という程出てしまったそれらの空きスペースを店舗又はダークストア(デリバリー拠点)とした場合には、生鮮食品販売最大手になってしまう可能性もあるわけです。

小さな脅威だったアマゾン・フレッシュが、2時間以内でデリバー、そして30分以内のピックアップが可能となった今、ウォルマートは必死でそれを追従する為に、店舗内や隣接にロボット仕掛けの「Micro Fulfillment Center」を設置しています。 

重要なのは、三度目の緊急事態宣言が発出された日本においても同じ事が起き、日々の食品の買い物は信頼が置ける地元スーパーのデリバリーでと考える可能性が十分にあるという事で、この動きを過小に見る事は危険です。 

 「ボーっと生きてると叱られる!」、では済まない事になります。


アマゾン・フレッシュはこの先、更に37店舗の開店予定とニュースになっていますが、ニューヨークでは最低でも数店舗の開店予定が入っており、共に郊外の住宅地を控えたモール内となっています。 更に他都市ではニューヨーク南側のフィラデルフィアと首都ワシントン周辺との事ですから、我々の通常の広域視察範囲という事になります。

既に調査したシカゴ郊外とニューヨーク郊外のフレッシュ店の立地を見ると、先に述べた大型小売業だった店が撤退した居抜きである事と共に、中級住宅地を控えている事が確実で、アマゾンが言うプライム会員の人口比が高いエリアに合致します。 アマゾン・フレッシュのデリバリーは、プライム会員に対しては配達料が掛からず2時間以内のデリバリーであり、競合するウォルマート他に対してその分優位になります。

現時点ではボストンはその中に入っておりませんが、1000店舗の展開であればボストンも時間の問題となります。

ロシュが開店したこのウォータータウンの周辺も中級から高級の住宅街を控えており、人口も多い為競合する大小のモールや食品店が点在します。

その中で、どの町でも求められる素晴らしい食品店ルッソズがあります。

現在の店主であるトニー・ルッソさん(上の写真)の曽祖父がこの町で農業をしていた当時、彼は誰でもやっていた畑の一角に作った直売所から商売を伸ばし、付近の農家仲間の商品を一緒に売っていた事から始まった食品店です。

今でも地元の産物にこだわり、店内ではその農産物の販売と共にそれを加工して調理した惣菜や下ごしらえした食品、パンやケーキのベーキングもオープンキッチンで作業が見える売り場を作っています。

この食品店の素晴らしさは、値段が安いウォルマートも、デリバリーで便利なアマゾンも、高級スーパーのウェグマンズもパブリックスも絶対に敵いません。

徹底的に品質にこだわり、地元商品にこだわり、その他のものやシーズンのものは産地と生産者にこだわった商品を集めます。 これはこのまま日本の中のどこへ持って行っても、超一流になります。

アメリカの消費者は今回のコロナでローカルの産品に目が行く様になり、状況が落ち着いた今も地元産の良い商品を求める習慣が生まれてきました。 日本にもこの動きや習慣が届くのではないかと考えています。

   

日本からのニュースでは、東京と関西地区で第3回目の緊急事態宣言が発出されたとの事伺いました。

今から1年前にはニューヨークは世界で最悪の感染都市になり、世界各国も同様に、この世の終わりにならない為の最大の作戦を遂行しました。 それでもニューヨークだけで毎日の死者が700人−800人と増えていた頃でした。

その頃の日本では非常に小さな数値であり、万全な対策をとる事で撲滅させる事が出来たはずと悔やまれます。

今すべき事は難題ではありますが、1年前にニューヨークでやった様な強力なステイ@ホームである事は明白です。

アメリカでは全米各地でワクチン接種のペースが上がり、ニューヨークは全米で一番初めにコロナ収束宣言を出すべく、州知事と住民が協力して数値を一気に下げています。(現在州民の約50%以上が接種済み)

今問題になっているのは、米国内の地方の一部(地域的に偏ってる様)に見られるワクチンとマスク着用の反対派の動きです。

現時点ではワクチン接種拡大の効果が現れ、一部地域を除いて感染が縮小しコロナ規制は緩和していますが、多くの市民はまだ暫くの間はコロナ対策を続ける様で、小売業側も同様の対策をとっています。 

下城NYニュースではアメリカのスーパーマーケットと小売業の情報発信として、オンラインのウェブセミナーを行っております。 

ニューヨーク周辺のスーパーマーケットは勿論、全米評価でトップとランクされるアマゾンやH-E-B、ウェグマンズやホールフーズと並んでパブリックスを含むワシントン商圏のマーケットや、ボストン、シカゴという小売業の先端店舗がある地域のマーケットと比較したセミナー内容をお作りしています。

通常のニューヨーク視察であれば2都市は可能ですがそれ以上は非常に時間が掛かりなかなか足を伸ばせません。 コロナ騒動が続いておりますので、皆さんが現地へ行けない分、私が足を伸ばして情報を収集し、下城NYニュースでも取り上げている非常に優秀なテキサス州のH-E-B等もご紹介致します。

是非この視察研修プログラムで最新情報をキャッチして、アメリカの優良企業を目の当たりに接し、体験する事で、愛社精神と人間力を培って、この業界をリードするトップになって頂ける事、又、参加されるスタッフさんの感動を引出す事は間違いありません。

ご興味のある方は下城までご連絡下さい。                                                           

チャーリー下城NYC■ 04/25/2021

https://ny-news.amebaownd.com/


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