ニューヨークは今、10月27日(アルディVSリドル)

アメリカのスーパーマーケット業界はコロナ発生以降に沢山の対応と変更をしてきましたが、我々が食べるものや消費するものの絶対量には変化がなく、エッセンシャル(生活必需)ビジネスである事から各店共に工夫をしながら営業を続け多くの企業で業績を伸ばしました。

アマゾンなどは良いタイミングで2017年からフレッシュのデリバリーを導入し、2020年のコロナ真っ最中に実店舗を開店したものでした。 現在全米展開2000店舗を目指してシカゴから首都ワシントン、そしてニューヨークへと展開を伸ばしています。

アマゾンフレッシュが狙ったのは一般のスーパーよりも価格は抑え、ディスカウンターのウォルマートやボックスストアの価格層へは入らないという戦略です。


コロナの前から始まりましたが、ニューヨークを見ているとホールフーズを筆頭にデリバリーが爆発的にブームになりました。

コロナのピーク中はホールフーズは現行店舗を臨時のデリバリー専用店舗(ダークストア)とした店もありました。

買い物回数を減らす為に、センターストア商品(主に生活必需品)を中心にまとめ買いをする事も念頭にコストコやウォルマート、そしてボックスストア(ディープディスカウンター)のアルディやリドルなど、ドイツ発のマーケットも大流行りとなりました。

どうやらこの動きは日本でも同様の様です。

(ボックスストアとグーグル検索すると、梱包用の箱関連が出ちゃうので、まだこの言葉が未だに一般的ではないという事がわかります)

アルディとリドルのアメリカ展開の、典型的な店舗外観はこんなです。

アルディは基本が「FOOD MARKET」である事が明記されていて、路面の新しい店舗は横の壁にも採光用の窓が付いてます。

自然の採光を使って、店舗運営上非常に重要なポイントである店内照明用の電気代コストを下げる事が出来ます。

1976年にシカゴ郊外で創業され、現在全米で約2000店舗展開しています。

初期のアルディをシカゴで見ていますが、店舗のロケーションと周辺が怖過ぎて視察は勿論止めにして、実際に自身の下見も覚悟して行ったものでした。(アル・カポネの世界かも)

リドルは更にガラス面が大きく明るく綺麗、こちらはこれまで下見した店舗では基本的に安全な地域でした。

こちら後発で2017年に首都ワシントン郊外で創業、現在年内200店舗を目指しています。

両店の外観だけを見ても、アメリカのマーケットとのテイストの違いを感じます。


このボックスストアの業態を日本へ持ち込んでいるチェーンがあり、例えば関東地方で良く目にするビッグAもその一つ、最近はパレッテやフーコット、そして関西ではサンディなどがあります。

しかし今をさかのぼる事40年か45年、当時ダイエーの中内さんはダイエーとは違う名前でボックスストアを開店させていました。(店名忘れましたが訪問したのは埼玉県加須とか所沢だったかでした) 

ちょうどその頃のアメリカではウォルマート(1962年創業)が展開し、コストコ(1983年創業)の前身であるプライスクラブ(1976年創業)が開店し消費者に衝撃を与えた頃ですが、おそらく中内さんはそれを見て、素早く同じ事を日本でやったのだと思います。(確か1年くらいで消滅したか)

その当時の大きな経済成長の中で、無名で安い商品をまとめ買いして貰う為に、展開地域として選んだ東京周辺の人は求めていなかったという事、タイミングが早過ぎるとこういう事になったのでしょう。


ボックスストアでは店内の内装はミニマムで、ゴンドラ配列ではなく壁面に棚を付け、通路に沿って平台が置かれその上に乗る商品は配送された箱そのまんま、お客はセルフでそこから商品を取り出して買っていくのです。 その梱包の空き箱はお客がレジ袋代わりに使います。

冷蔵商品も冷凍商品もあり、日用雑貨品も売られます、しかしその商品の多くはPB商品で見慣れないブランドの商品がほとんどです。 この2社では扱い商品の90%程がPB商品のはずで、だからこそ破格で売る事が出来るわけです。 

また、共に接客販売のコーナーはありません。

上はアルディで、下がリドル。 配送の箱を積み上げただけというのはこういう事です。

これら2つのチェーンはドイツから始まってヨーロッパを中心に世界の広い地域へ展開しており各々総店舗数は1万店舗を超えています。

アメリカの人口は3億3千万人を超え移民を含む子供が増え続けている状態で、アメリカ人の食欲は勿論体格を見たら分かる通りで、どんどん衝動買いもする消費意欲があるこの国は、海外から進出する企業には非常に魅力があるはずです。 

今の日本はその反対なので、海外の食関連企業の多くは魅力を感じません。

この2つのチェーンはニューヨーク近郊にもたくさんあり私自身も買い物によく使います。 興味深いのはそのPB商品で、多くはドイツ等ヨーロッパからの輸入品であり価格に対して非常に良いもの、面白いものが扱われます。 比較的中国製は少ない様です。 日本のPB商品にも共通ですが、大手の生産工場で製造されているものが多く商品の品質に引けを取らないものが多いのが事実です。

実際にチョコレートやスイーツはドイツ製、オーストリア製、スイス製などで、その多くはアメリカ製の繊細さを欠いた甘いだけの商品よりずっと上質の様です。

良いものや美味しいもの、そして自分の好みに対する品質や味覚の判断が出来ないと時としてナショナルブランドが売られる一般のマーケットへ行く事になります。

勿論それが悪いわけじゃなく、こういうPBの選択肢があるのは、こんなご時世では特に有難いと思うのです。  日本もおそらく同じ動きがあるのだと理解しております。


コストを下げて商品価格を下げる事で拡販して利益を上げる効率の話しをもう少しします。

日本でも一部採用されている様ですが、アルディのPB商品のユニークな部分をお見せします。

コーンフレークは$1.69、大きな箱ですが500g入りです。

これはなんの変哲も無い、ロール状になって箱に入ったゴミ袋です。

六面体の箱の正面になる面以外のすべての面にバーコードが付き、そのうちの二面ほどは箱全面に大きく長いバーコードを付けます。 本来は商品の特徴などが分かる写真やイラストを使う箱のデザインなのですが、アルディでは効率を考えてバーコードを付けるのです。


もう一つお見せすると6個入りで$1.79(200円以下?)のベーグルですが下の方3か所にバーコードがあり、他のパンもそうですが基本的に手で掴んでも大丈夫な上側じゃない方にバーコードが複数付きます。

何の効率かといえば、レジ通過速度を上げる手段でどの面をスキャンしても読み取りが出来るので、レジさんは各々の箱のどこにバーコードがあるかを確認せずに早いペースで読み取りを終えられるのです。 レジ通過速度が速ければ、少ないレジ台数で短時間で多くのお客を少人数のスタッフでこなせる事になり、レイバーコストを下げられるのです。

レジの作業を動画でお見せしたいと思います。


もう一つはアルディのカートにあります。

店頭に並ぶカート置き場を見ると、看板に25セント硬貨と何やら文字が書いてあり、カートが全部チェーンで繋がっています。 

「25セント硬貨が何ドルもの節約になります」と書いてあって、その理由は文字が細かすぎて読めません。

チェーンに硬貨を入れる口が付いていて、ここに硬貨を入れる事でカートが離れて店内で買い物が出来るのです。 買い物が終わったらそれを車に積み込んで元のカート置き場に戻してそこにあるカートと繋ぐ事で、その硬貨は戻るのです。

という事はたかが25セント、ほんの数分そこに預ける事になるのですが、お客自身がカートを戻す事でお店の手間(レイバー)が省け駐車場のカート放置もほぼ無くなるるのです。 でも万一面倒で(または赤ちゃんが居てなど)カートを置きっ放しにしたら、次のお客がその25セント入りのカートを使って買い物をすると、25セントは自分のものとなります。 買い物をそのまま車へ持ち込む習慣のボックスストアでは、バスケットを基本的に使いません。(盗まれます)

それによって競合のスーパーが30分に一度カート集めをしている人件費は、アルディでは削減出来てその分は商品価格を下げるという「ダラーズの」節約が出来るという事です。

細かい事を言います。 この冷暖房は天井に直付けで六方向に風を吹き出します。 この売り場ではエアコン用のダクトを使わない事で工事期間を短縮し内装コストを下げ、メインテナンスコストも下げます。 約1500平米+のこの店舗にはこのこの直付けエアコンが2台付いていました。 

二つのドイツ発のボックスストアには共通点も多く、また独自のものもあり消費者を惹きつけるのだと思います。

言い忘れました、アメリカの人気食品店チェーンのトレーダージョーズとアルディは兄弟会社であり、扱い商品の多くはPBである事などやっている事にも共通点がたくさんあります。


後発のリドルはアルディとの差別化を出していて、アルディの2倍以上の広い売り場を生かして、アルディが不得意としているフレッシュ(野菜果物、肉魚など)の売り場を充実させ、インストアのベーカリーが付いています。 個人的意見ではヨーロッパ的感覚の美味しいパンが安く売られています。

日用雑貨品も週替わりのローテーションになっていて、その時期のものを中心に扱われます。

機械工具も相当揃っていて、夏の間は当然ですがどこの裏庭でもやる炭焼きのBBQコンロが$89、でした。

アメリカでは州によって酒販法が変わりますが、ここニューヨーク州では食品店で扱えるお酒はビールだけです。 それ以上(ワインやハードリカー等)のお酒は酒屋さんへ行く事になります。 従ってここではビールだけですが相当格安で売られている様でした。

そして違うお店、ちょっと見難いですがこちらはバージニア州のアルディですが、南部の州ではお酒やたばこの制限が緩い様で、ほとんどのスーパーやコンビニ店でもビールは勿論、ワインをはじめとするリカー類が扱われています。

コロナ中の視察の折はお客も入店時にマスクと手の消毒が必要でした。 ちゃんと守られてました。 見難いですがレジにはアクリル板が設置されています。 

レジ袋は有料なので、多くのお客はエコバッグを持っている事に加え、郊外の買い物客はこのまま買い物を車まで持って行き、トランクへ積み込むのです。

アメリカでは州ごとの法律があるので、一部の州では今でも無料のレジ袋があります。


差別化の一つはリドルのリワードプログラムとクーポンです。

これは私のiPhoneに入っているリドルのアプリですが、毎週メンバーだけの割引商品があり、その商品は2個目がタダとか半額になるとか、30日間の売上総額に応じた割引きや$20、という少額の買い物を30日間で3回する事でのリワードがあります。 

例えば達成すると「冷凍のシーフード商品を、とかクリンリネス関連商品を10%引き」とか、まとめ買いでは大きな金額になり得るリワードをやっています。 

これはアルディにはありません。

リワードプログラムは小売り業だけでなく外食産業でも大いに使われています。

バーガーキングは積極的です。

水曜日にはワッパーとインポッシブル(プラント肉)のバーガーが$2、です。

リドルは1個買えばもう1個は半額、又は2個目はタダというのも多いです。

このリドルは現在東海岸周辺だけで展開を広げていますが、ニューヨークの展開に関しては当地の中堅のスーパーマーケットチェーンである「ベスト・スーパーマーケット」を傘下に収め、その26店舗のほとんどをリドルに変更して店舗を伸ばしています。

リノベして開店する店舗のほとんどはネイバーフットセンターの中にあり、店舗外観や内装の変更は限定的ですが、リース料も建築費も格段に高いニューヨークでは、賢い選択をしたと考えます。

ちょうどロングアイランド地区でそんなベストマーケットからリドルに変更した店舗の開店があり視察に行ったところ、フリーギフトやホットドッグの試食など、音楽もかかってお祭り騒ぎをしていました。 夏の間のコロナが落ち着いた時期でした。

ここでは店内とレジ周辺の動画も撮ってあり後日公開出来ます。

コロナ中の開店日は距離をあけて並んでいます。

同様にニュージャージー地区で開店したモール内の居抜き店舗です。

先行しているアルディは売り場面積やインストアベーカリーという、リドルとの絶対的な違いを縮める為にパイロット店を持っています。

シカゴ郊外の店舗はデザインも変えインストアベーカリーも付いています。 これはドイツ本国やヨーロッパではあるタイプとの事です。

パンの売り場もデリバリーで届いたそのままを売り場に出しますが、写真の一番右側は店内調理のベーカリーのコーナーです。

シカゴではリカー販売にも注力しており割安のお酒がありました。

買い易いかどうかは別にして他店では見ない省スペースのフリーザーが入ります。

もう一つ、私が先週皆さんに送ったe-mail の中で、これらの店舗名を知らない人も居ると思います、と書きました。 宣伝費使わないですから、って。

宣伝しなくてもお客を集める良い方法は、コバンザメ商法をやっているのです。(古過ぎ)

ボックスストアは多くの場合ウォルマートやターゲット、シカゴを含む中西部ではマイヤーという強力はGMSチェーンの近くに店舗を出します。 

ボックスストアはGMSよりほとんどの場合価格は安く、違うのはNBを安く売るGMSに対してボックスストアはPB商品です。 商品価格が10〜20%安ければお客は安い方に流れる、そういう客層がいる立地にGMS、特にウォルマートは多く出店します。 同時にそこはNB商品とPBの価格差が10〜20%あればボックスストアにお客が流れるお客層でもあるのです。 

ウォルマートが調査を(時間と金を掛け)して出店すると決めてから開店までに数年掛かる事が多く、2千平米程度のボックスストアは時には数ヶ月で開店出来ます。 ボックスストアは調査の費用を掛けずに、その工事期間中にも稼いじゃう事が出来、客を掴んでしまえるのです。

我々の下見では多くの立地でそれらがセットになって出店しているのを見ます。 

販管比率の話しをしましたが、店作りに金を掛けず、宣伝費を掛けず、レイバーコストも大いに節約し、電気料金も節約、出来る事はどんどん切っていくのがドイツ式のボックスストアの様です。

労働生産性を如何にして上げるかという言葉に変えてもいいですが、我々の給料を上げる方法がいくつもある中で、それに直結する、一番手っ取り早くて目に見える利益のアップと言えるかも知れません。

論より証拠、皆さんにもそんなマーケティングを確認し体験して頂きたいものです。


ボックスストアに関する無料のズームミーティングを11月初旬に予定しております。

日程はメイルとブログにてお知らせいたします。

ご希望の方はメイルにてお申し込みください。

cs@shimojony.com

チャーリー下城

by Charlie Chikao Shimojo - New York


ニューヨークでは毎日の様に新しい動きがあったり情報が入ったりします、ニューヨークの小売業と外食産業の動くを頻繁にアップ致します。

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SHIMOJO NEW YORK NEWS

チャーリー下城の仕事は徹底した流通業界の下調べと足を使った確実な情報に基づいています 賞味期限の切れたような情報はございません チャーリー下城の視察研修をぜひご体験下さい ニューヨーク・ボストン・ワシントン・シカゴは豊富な経験と 幅広い情報からお客様に見合った最善のアレンジをご提供させていただきます