下城NYニュース、06-'21(NY都市圏のスーパー)
下城NY・ニュース、2021年06月
ニューヨークの都市圏といった場合には、ニューヨーク市の中心であるマンハッタンのタイムズスクエア周辺(但し位置的には南側です)から半径約50マイル(80キロ)程度とされ、一部電車や交通の便によっては120〜130キロ離れた地点までの事を表します。
この地図は少々分かりにくいかも知れませんが、中心部のオレンジ色の下の方に1〜5の数字が入っていますがそれだけがニューヨーク市内となっていて、州は北へ大きく広がっています。
数字が付かないオレンジ色部分はニューヨーク州で、ピンクはコネチカット州(CT)、赤はニュージャージー州(NJ)です。
オレンジ色の中で右下の棒状に長い部分はロングアイランドという島で、主に住宅地となっていますがその先端に近いところはリゾート地になっています。
自動車社会のアメリカでもニューヨーク市内は地下鉄やバスが充実し、それと別路線で主に通勤に使われる郊外電車があります。 その一部はアムトラック(大陸横断も出来る路線網)の線路上を走り、そこから支線も出ています。 勿論、幹線高速道路を含む道路網も発達しています。
ニューヨーク都市圏の面積は東京と埼玉、千葉、神奈川を合わせた広さに近く約1万2千平方キロ強で、その人口は2千万人を超えています。 一都三県が東京の都市圏とはならないと思いますが、そちらの人口はニューヨーク都市圏よりずっと多い3千3百万人以上との事です。
私はそのニューヨーク商圏を頻繁に移動して調査や活動をしていますが、一番店舗数が多いスーパーマーケットは何処かと考えてみました。
スーパーマーケットとは生鮮を扱う食品店で日用雑貨品も扱い、店舗やチェーンによってサイズも扱い商品も相当違いがあります。 しかしコンビニや販売商品を絞り込んだ専門店ではなく、一般的なスーパーマーケットと考えた時に店舗数が多いのはリージョナルチェーンのショップライトとストップ&ショップだと想像出来ます。
各々この商圏では200店舗以上と発表されています。
5月19日にニュージャージー州ウォールタウンに開店したのがこのショップライトです。 タイムズスクエアからの距離を測ったら、大回りして走るのでぴったり100キロでした。 上の地図でいうと赤いNJ州の中では一番下の方ですが直線距離では50キロ程です。
コロナで状況が少し変わっていますがこれは十分通勤圏内です。
広い郊外地域なので店舗面積も大きくて約7600平米あります。
アメリカではほとんどのスーパーマーケットチェーンは全米展開しておらず、出店地域が限定されたリージョナルチェーンか、さらに限定のローカルチェーンです。
全米最大のスーパーマーケットチェーンは、大陸の真ん中辺りのオハイオ州に本社があるクローガーで総店舗数は約3200店舗ですが、その中の約1300店舗がクローガー店で残りは傘下の別の旗印のスーパーです。 ニューヨークを含むアメリカの多くの州にクローガーはなく、一部の州にはクローガーの傘下も全く無いという事になります。
地図上の青い点がクローガーとその傘下の店舗で、濃いところは店舗数が多くそれは集中してドミナントしていますが、全く無い州や地域もある事が分かります。
クローガーがほぼ進出していないフロリダ州地域での新しい作戦については、後で触れさせて頂きます。
ちなみに世界最大の小売業であるウォルマートはスーパーマーケットではなくGMS(総合小売業)といいます。
でも今日はショップライトのお話しです。 ショップライトは本社がニューヨークのすぐ西側のニュージャージー州にあり、ニューヨークを含む周辺の6州にて約320店舗で展開するリージョナルチェーンです。
ショップライトの最大の特徴は「ウェイクファーン社」が組んだ協同組合によるボランタリーチェーンである事です。
フランチャイズとちょっと似ていますが、ショップライトのボランタリーチェーン加盟者はショップライトから商品を仕入れる事が出来、同時にその他独自の仕入れルートを使い扱い商品をどんな形でミックスする事もできます。
もう一つの特徴はショップライトの看板を付ける事が出来、その時点で、すでに築かれている知名度を使う事が出来ます。
ショップライト独特の「Can-Can セール」(缶飲料の割引セール)など、人気のプロモーションやフレーズを使えます。
ショップライトの仕入れルートでは通常のスーパーマーケットで扱う商品以外の季節商品や衣料品等も多く、それがショップライト独特の店作りに生かされている事をよく見ます。
加盟メンバーは現在50社で、300店舗以上の店舗網になっています。
ウェイクファーン社は商品の卸売会社でもあり、「ShopRite」PB商品を含む商品を一般の食品スーパー等へ卸売りもしており、多くの小規模チェーンや個人経営の食品店でもショップライト商品が扱われています。
ショップライトの本社があるニュージャージー州は酒販ライセンスが特有で少々複雑です。
例えば、ニュージャージー州内において、一人または一社は2店舗までの酒販店許可を取る事が出来ます。 という事は、ウォルマートもホールフーズもトレーダージョーズも、ニュージャージー州内の2店舗だけがワインやハードリカー(や勿論ビールも)を扱えますが、3店舗目以降は一切のアルコール含有飲料や食品を扱う事が出来ません。
この酒販法のおかげで、調味料であるみりんや日本酒でも、例えそれがお菓子用の小瓶のブランディやリカーなどもお酒類である以上扱う事が出来ません。
ごく例外として逃げ道がある様で、ある時点(10年程前)の事ですがニュージャージー州内のウェグマンズも2店舗だけがリカーを扱っていたものの、3店舗目の店内に仕切りを付けて入り口も完全に別にしたリカーストアを併設しました。 これは全く別の人(といっても契約を持っての事)が酒販ライセンスを取りウェグマンズという店名を許可されて運営している形にしたわけです。 ウェグマンズリカー店はリカー商品(お酒)以外のものはつまみなどの関連商品ですら扱えず、又、スーパーのウェグマンズは従来通りリカーは扱えずディスプレイする事も出来ません。
更にある時、リカー店開設時には両店の出入り口は別で店内でのアクセスは無かったのですが、そのルールが緩和され現在は店内で行き来が出来る様になり便利になりました。 但しレジは別で、リカーの支払いはリカー店で行い、リカー店で食品店商品を売る事もディスプレイする事も出来ません。
その点ショップライトは少々違います。 オーナーが違うスーパーマーケットの集合体であって、リカーライセンスの申請人が違うならば2店舗までの申請が出来るので、ニュージャージー州のショップライトではおそらく50店舗程度のリカー付きの店舗がある様です。
上のリストはリカー付きショップライトの一部ですが、このリストの多くがニュージャージー州内の店舗です。
残念ながら5月に開店した今回のウォールタウン店は、ショップライトだけを30店舗運営している加盟店中で最大級のメンバーであり、この店舗ではリカーは(NJ州なのでビール含む一切の)扱っておりません。
酒販法は州ごとの法律でかなり内容にばらつきがあり、ニューヨーク州では食品店、コンビニ等では基本的にビールだけしか扱かえません。 ワインやハードリカーはリカーショップへ行かなければならないという不便があります。
ショップライトの加盟オーナーは1店舗だけの場合もありますが、今回のウォールタウン店オーナーであるセイカー・ショップライト・グループの様に30店舗を持つ大きな企業となっている場合もあります。
いずれの場合でもその地域の住民事情や習慣などをよく把握した上で店作りや運営に反映させる事ができます。
結果として、通常のチェーン店の様にほとんどの店で共通の店作りであるという事はなく、ショップライトでは全く独自のユニークな店舗を見る事が珍しくありません。
この写真は多くの店舗で採用するWエントランスから店舗入り口までの店頭プロモーションスペースですが、シーズナル商品やセールによく使われ、雨や雪の時にも非常に便利なスペースとなっています。
広い入り口にカスタマーサービスとフローリストはアメリカのスーパーでは常套手段です。
お客の目を引く綺麗な色と匂い、そしてその次の生鮮コーナーはカラーコーディネートされた野菜、果物です。
入り口付近は店内の奥に入らずに選べるテイクアウト食品や惣菜が並び充実しています。
ここに並んでいたのは寿司と中華のショップ、その奥はデリーとピザです。
スープとバラエティーのチキンウイング、ロテサリーチキン、インストアベーカリーなどが一角に集まります。
惣菜やデリーの一部はカウンターサービスになっていて時間帯によっては混む事が予想されますが、そこにはタッチスクリーン型の「Order Express機」が5〜6台設置されていて、買い物の最初にここでオーダーを入れておけば最後にそれを受け取ってレジに進む事が出来ます。
デリーコーナーで人気なのがハム・ソーセージ・チーズなどをブロックから切り分けて貰ったり、好みの量と厚さを指定してスライスして貰うものです。 近年多くのお客の要望は工場パック商品ではなく、店内カットのこれらのハムソー商品なのです。
コロナ前からの動きですが、多くのスーパーで店内スライスパックが並べられています。
それも特に週末などは混み合う原因になっているので、最近用意されているのが店内でスライス済みのこんなハムソーセージパックです。 多くは1/2ポンド(225g)と1ポンド等が用意されていて好きな量を選ぶ事ができます。
タッチスクリーンでのオーダーやお客自身のスマホでオーダーが出来るシステムは最近のスーパーやファーストフードコーナーでは必須になっています。
プライム等グレードの高いビーフに加え、日本産の「Kobe Wagyu $89/lb(約100g=2000円)等も扱っていました。
ざっくり並べられた鮮魚のコーナーもきちんと温度管理され良い色合いです。
セルフレジは12台あり、6台は30品目まで、6台は点数制限が無いとの事、コンタクトレスを意識したものと思われます。 14台並ぶ通常型レジの横にはオンラインオーダーの「from HOME」のコーナーがありデリバリーのプレップをします。
5月号で掲載したノースキャロライナのローズ・フーズもオンラインを使ったこれからのスーパーマーケットを提案した素晴らしいマーケットでしたが、我が地元ニューヨーク・ニュージャージー州のショップライトはコロナの前からfrom HOMEを本格的に使っていた事もあり、昨年の売り上げを一気に伸ばしたスーパーの良い例となりました。
そしてここでもう一つ、最初のページで名前を挙げたもう一つの競合するスーパーマーケットのストップ&ショップです。
店頭外観と店内のがらんとした写真2枚だけを載せておきますが、この2店舗の距離は1〜2キロで同じ商圏です。
先に触れた全米最大のスーパーマーケットチェーンであるクローガーについてですが、その傘下には別のブランドで、首都ワシントン周辺から南の東海岸で展開するハリスティーターや南カリフォルニアが展開エリアのラルフスなどがあります。 チェーン総店舗数は傘下を入れると3200店以上ですが、現在フロリダ州には傘下の数店舗しかありません。
アメリカの州別人口でいえば、フロリダ州は面積が広い事と天候が温暖でリゾート地や観光地がある事で引退した家族の住民が多い事もあって、カリフォルニア州とテキサス州に続く全米第3位の2千万人を超える人口です。
フロリダ州には南部地域にて1200店舗以上でドミナントしているスーパーマーケットチェーンのパブリックスがあり、州内だけでも700店舗以上、全米でもトップクラスの人気とパフォーマンスを誇っています。 全米最大のチェーンであるクローガーがここに進出するにあたっての作戦は、デリバリーのみの無店舗スーパーマーケットと言う事でした。
フロリダ州の中央部でディズニーワールドがある事でも有名な地域に、既に巨大な配送センターを建設しイギリスのOcado社のロボットを仕込んで、この4月からデリバリーが始まっています。
この一か所の配送センターで、1000台以上のロボットを導入していて、既に全米の他都市でも実用運営しています。
通常店内の商品をピックして準備する場合は1オーダーに40−45分掛かるところ、ロボットなら6−7分で可能です。
ニュースではフロリダ州内でも複数の配送センター開設が予定されており、全てが操業した時には隣接のジョージア州やアラバマ州の一部への配送も含まれるとの事です。
しかしクローガーは現時点でフロリダ州内において通常店舗を展開するかどうか決定していない状態との事です。
顧客はオンラインかスマホの専用アプリでオーダー出来、オーダー総額や配送時間等の要素によって配送料が決まっているとの事で、拠点から最大145キロ地点までを冷凍冷蔵のバンを使って配送するそうです。
デリバリーやピックアップ専門、又はそれを中心としてお客の獲得を優先するスーパーマーケットの店舗展開は、これからのアフターコロナにおいて最も有効で効率が良い展開方法の一つと考えられています。
ですからアマゾン・フレッシュが一気に加速した実店舗での展開はどのレベルで考えても脅威になり得るのです。
(写真は通常のスーパーマーケットでの買い物点数でも、GOと同様のレジレスで清算して買い物が終わるという最新システムを表しています)
ロサンゼルス周辺、シカゴ郊外に続いて、首都ワシントン周辺のバージニア州で首都圏の第1店舗目が開店しており、更にニューヨーク郊外数カ所でも工事が進んでいる状態を確認しています。
最新ニュースではアマゾンフレッシュのフルサイズ店でもGOと同様の「Just Walk Out(買ったら出るだけ)」という店舗が開店との事です。
下の写真は店頭でスタンバイ出来てお客を待つダッシュカートです。
アマゾンは先月まで運営していた「アマゾンGOグロサリー」というスーパーマーケットに近いタイプで生鮮食品なども揃えた業態の2店舗がありましたが、キャッシャーレスであったものの1000平米以下というスーパーマーケットとは言えないサイズと品揃えの業態を中止閉店し、今回約2300平米のアマゾン・フレッシュとしてチェーンに加えたものです。
アマゾンフレッシュの14店舗目にして初採用したジャスト・ウォークアウトというアマゾンGOと同様のキャッシャーレスのシステムは、通常のフレッシュ店で使うダッシュカートでの買い物に比べて店舗工事に時間と費用が掛かります。 何故なら店内に数千台のカメラとスキャナーその他の設備が掛かるからで、全店舗にこれを採用するとは思われません。
しかし今週開店した上記(ワシントン州)のフレッシュ店での採用に加えて、すでに開店しているシカゴ郊外の店舗でもその取り組みを準備している事を確認しています。
又、ニューヨーク郊外の店舗(まだ工事中ですが)続々開店する事になっています。 この上の2枚はニュージャージー州でアマゾン独特のフロントのファサードがあり、工事中の店内も外部から簡単に覗けます。
次の2枚は同じくニューヨークの郊外でも北側のコネチカット州ですが、こちらはブルーシートで囲われて内部が見えない様に工事を進めていて、これがニュース報道されている天井内の配線やGO特有の出口ゲートが出来ている、というフレッシュ店です。
よじ登って写真を撮ってくる勇気がありませんでした。
最後2枚の写真は天井にカメラが付いていない店舗(Schaumburg)とカメラとスキャナーが付いた店舗(Naperville)です。 共にシカゴの郊外店です。
下の写真分かりますか? 天井から垂れ下がっているのはライティングだけじゃなくカメラとスキャナーです。
日本でも似た様な動きが出る事と思いますが、アマゾンの店舗やシステムに関してのニュースは直前まで発表しないのがアマゾン式なので、いつ何が出るか分からず、出し抜かれたりしない様、注意が必要です。
アマゾン・フレッシュの場合このご時世で撤退したトイザらスや家電チェーンの大型小売店スペースや、シアーズやJCペニーなどモールのキーテナントとして使われていた空きスペースに居抜きで入る形で店舗網を広げています。 そのメリットは広さと共に家賃交渉での優位性と、デリバリーの拠点であり集客性は優先しなくて良い事がありそうです。
デリバリーの拠点やダークストアを持つ場合、ロケーションの制限が緩み広くて安い立地を選べるのです。
今から1年前のニューヨークは世界最悪のコロナの状況と数値(PCRテスト陽性率が48%)であったわけですが、その反動でステイホームやコロナ対策には大いに協力した事で現在の数値はコロナ発生後最小になっているそうです。
それを反映して、今週の州知事方針ではほとんどのコロナ関連の制限を撤廃し、ワクチン接種者は屋外においてマスクは不要、イベントの多くも人数制限を100%に戻しました。 本日6月15日は発生から472日目です。
毎夏開かれ昨年は当然中止であったニューヨーク州の博覧会も、今年は屋外のみですが客数100%で開催です。
アメリカの州の中で、ニューヨークが最初のコロナ終息宣言を出せる州になる事を願っています。
心配の種はこの1年半で弱ってしまった多くの小売業やレストランの事ですが、先月一気に再開した事で従業員が不足している状態です。 多くのワーカーは他の仕事に就いていて去年から時給が上がっている事ですぐには戻れない様です。
この数ヶ月で新しいスーパーマーケットの状況や変化をお伝えしてきましたが、もう完全にコロナ後の小売業を見据えた店作りや運営方法にシフトしている様です。
それら最新情報を含めた「2021年の小売業オンラインセミナー」パワーポイント資料を用意しております。
6月末の28日(月)から7月01日(木)で開催の準備を進めております。
セミナーは約1時間で、カバーしますのは:
*1年間のニューヨークで起きた事(パンデミックとBLM暴動の影響も含)
コロナ対応で店舗側がしてきた事、お客の購買動向が変化した事
*各チェーンにおけるコンタクトレスの取り組み
ステイホームの為にアプリを使って買い物、デリバリー、店頭引き取り
*アマゾン・フレッシュの実店舗(シカゴ、ワシントン郊外)
*ショップライト(今月号の郊外型大型SM)
*アルディとリドル(ドイツ発のボックスストアチェーンの展開)
等を予定しています。
アマゾンフレッシュはロサンゼルス郊外に加えてシカゴ郊外で展開中ですが、新たに首都ワシントンの店舗も開店、周辺に5〜6店舗開店予定です。
下城NYニュースではアメリカのスーパーマーケットと小売業の情報発信として、オンラインのウェブセミナーを行っております。
是非この視察研修プログラムで最新情報をキャッチして、アメリカの優良企業を目の当たりに接し、体験する事で、愛社精神と人間力を培って、この業界をリードするトップになって頂ける事、又、参加されるスタッフさんの感動を引出す事は間違いありません。
セミナー詳細など後日ウェブサイトにてご案内致します、ご興味のある方は下城までご連絡下さい。
チャーリー下城NYC■ 06/15/2021
https://ny-news.amebaownd.com/
ニューヨークでは毎日の様に新しい動きがあったり情報が入ったりします、ニューヨークの小売業と外食産業の動くを頻繁にアップ致します。
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